(Choice)は、1959年に設立したオーストラリアの有力な消費者団体です。1960年から、『チョイス』という雑誌を発行しています。毎回、特定の商品・サービス、医療、健康、個人資産(保険、投資など)などの消費者に関心の高いテーマを取り上げ、商品テスト及びサービス内容を比較し、その結果を消費者に伝えています。また、読者から寄せられる情報の紹介や問い合わせへの回答から、啓発及び消費者政策の紹介・提言まで、非常に幅の広い情報提供を行っています。現在、17万人以上の定期購読者数(紙ベースとオンライン)を誇ることができるというのは、国民からの高い信頼度を得ている証しです。
以下、設立当初から、チョイスが重要視してきた「消費者安全」というテーマに絞り、2020年の2月から7月まで発行された『チョイス』の中から情報をピックアップしてみました。ここで、一部を紹介します。
*一部の情報は、会員ログインが必要
2020年2月号から〜
・製品安全関連法の強化を要請
チョイスは、豪州政府に対して製品安全関連法の強化を要請しています。背景には、家庭内でよく使われる製品による子ども(特に乳幼児)の怪我や死亡の事故、およびリコールされている製品(製品全般)の未回収率の実態があるようです。
チョイスによると、保護者にとって、玩具の小さな部品による子どもの誤飲の事故は想定しやすいでしょう。一方、家庭内で使用するごく一般的な商品も、誤飲のリスクがあるにもかかわらず、そのリスクを意識されないため、重症・死亡の事故を起こしています。例えば、ボタン式乾電池はその典型例です。
最近、乳幼児のボタン式バッテリーによる誤飲事故への対策として、豪州規格団体(Standards Australia)は、規格策定に着手することを表明しています。しかし、当団体が策定するのは原則的に任意規格となります。そのために、任意規格を採用するかどうかの判断は、各製造者の裁量に任されます。任意規格の義務化は、可能ですが、国や各州政府の権限行使に任されます。
チョイスは、さらに、リコールされている製品の未回収率を問題視しています。製品の回収件数は、1998年以降、4倍にも増えているのに、豪州競争消費者委員会(消費者行政の連邦機関=ACCC)の推定では、回収の対象となっている商品の約半分は、まだ回収されていないのが、大きな問題であるとしています。
チョイスは、上記の実態を踏まえ、製品全般の安全を強化するために、豪州法にない一般安全規定(注1)の導入を要請しています。そうすると、事業者が製品を流通させる前に、製品安全を確保することが義務となる、と指摘しています。
・海外から購入する製品の安全への注意
チョイスは、海外旅行中に、あるいはオンラインで製品を購入する動機として、低価格であることや、国内製品にはない特徴があることが挙げられます。しかし、中に模倣品や国内外で販売禁止・リコールの対象となっている製品、及びオーストラリアの製品安全基準を満たしていない製品があるから、消費者は慎重に製品を選ぶべき、としています。
・国内外の行政機関及び消費者団体の公開情報に基づき、次の5種類の製品を購入する際、安全性の確認を呼びかけています。
*乳幼児・小児向けの玩具
*乳幼児用製品
*USB充電器、旅行用の海外変換プラグ、モバイルバッテリー
*化粧品
*ダイエット用の医薬品、食品、機械
2020年5月号から〜
・ボタン式バッテリーの安全〜 続報
チョイスは、3月に豪州競争消費者委員会(ACCC)が安全基準の義務化(mandatory standard)を含む規制方法の検討に着手したことを喜んでいます。チョイスでは、長きにわたる活動で、設計及び製品情報についての安全基準の導入を要請してきました。今後の動向を注視する、とのことです。
・ストローラー トライク(ベビーカー と三輪車を一体となっている)の安全性
チョイスがストローラー トライク(注2)の製品テストを実施し、2/3の製品について、義務づけられているベビーカーの安全基準を満たしていないとの結果が出ました。チョイスは、この情報を規制当局(ACCC)と共有しました。
つづき...(会員ログインが必要)
2020年7月号から〜
本号は、チョイスの設立60周年を記念し、重要な活動分野となっている製品安全についての特集記事を掲載しています。
・チョイスのこれまでの業績のトップ5を紹介さしています
1) 1974年に制定された、取引慣行法(Trade Practices Act)の設立に貢献したこと(注3)。
2) 2005年に、12種類のベビーベッドの製品テストを実施し、5種類のベビーベッドが強制規格を満たしていないことと、2種類のベビーベッドが辛うじて合格している、とのテストの結果を公表しました。この結果を受けて、政府は2006年に常設専門委員会(Productivity Commission)に製品安全関連法規の見直しを委託し、その結果、2008年に製品安全を強化するための措置を承認しました。
3) 1967年に、チョイスが子供用パジャマの製品テストを実施し、パジャマの引火性の問題を発覚しました。この結果は、情報の開示(低又は高引火性の義務表示)を義務付ける強制規格の策定につながりました。
4) チョイスの調査により、加熱しながら混ぜたりできる多機能を持つ調理機器(当時のThermomix TM31)の部品の不具合により、火傷の事故が多発していることを判明しました(87名中、45名が怪我をし、その中の17名に治療が必要でした)。また、事業者に返金を求めた購入者から、威圧的な対応を受けた情報を収集しました。つづき...(会員ログインが必要)
5) タカタ製造のエアバッグのリコール
チョイスは、2017に自主的にリコールされていた当エアバッグの回収状況を調査し、不十分な点を指摘しました。この調査結果を受けて、連邦政府は史上最大級の強制的リコールを命じました。その後も、チョイスが引き続きリコール状況をフォローしています。2020年3月の時点で、20万個のエアバッグが交換作業を待っており、2020年12月まで、完成する予定となっている、とのことです。
チョイスは、今まで、多くの支援をいただきながら、製品安全の強化に貢献してきたが、まだまだやるべきことを指摘しています。例えば、長年チョイスがボタン式バッテリーの危険性を注視しています。2013年以降、子ども2名が死亡事故の他、たくさんの子どもが誤飲により怪我をしています。最近の製品テストでは、17種類の家庭用品中、ボタン式バッテリーがついている10種類の製品について、子どもが簡単に取り出し誤飲する可能性があるから、安全性に欠けていることを公表しています。
つづき...(会員ログインが必要)
・子どもと家具の転倒事故について
オーストラリアでは、毎年、家具やテレビの転倒により、病院で治療を受ける必要のある怪我人は、約2,500人にも上ります。イケア社は、2017年に行った、死亡事故を起こしたタンスをリコールするとともに、消費者向けへの注意喚起の公表活動を行ったため、ある程度、タンスの安全性に関する一般消費者の意識が高まってきています。
チョイスは、様々なリスクがあることを知っていても、どの程度の消費者が壁に固定しているのか、を調べるためにアンケートを実施しました。その結果は、テレビや本棚を固定する消費者は、半数以上(テレビは64%、本棚は58%)ですが、チェスト・タンスなどの家庭内家具の固定率が少ないこと(チェストは21%、タンスは18%)でした。固定しない主な理由として挙げられたのは、子どもやペットがいないこと(持ち家の人の55%)、家具や壁への変更が賃貸契約上、認められないこと(借りている人の58%)です。
一方、半数以上の回答者(65%)は、安全で安定している家具のデザインの責任は、生産者側にある、と考えています。チョイスは、製品安全についての一般規定の導入を要請しています。
・オンラインマーケット市場と子ども向け中古品の安全について
チョイスによると、2019年に、オーストラリアで販売された約9,500万個の中古品のうち、78%のものがオンラインで販売されました。Facebook Marketplace, Gumtree, eBayのようなオンライン市場は、利用方法が簡単で、無料のプラットフォームを提供していますが、一方、利用者としてリスクがあることを意識する必要があります。通常の小売店販売なら、リコールの対象となっている製品が流通しないように事業者が迅速に対応できるが、個人売り手の場合は、販売しようとしている製品はリコールされていることすら把握していない可能性があります。
チョイスの調査では、安全性に欠けている製品は、オンラインマーケット市場において広く販売されていることが判明しました。また、上記の複数のオンライン市場を中心に、リコールの対象となっている子ども用製品を検索し、見つかった製品の名前と問題点を公開しました。
つづき(会員ログインが必要)
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注1 欧州法(一般製品安全指令=GPSD)にあるように、製造者に対して、安全な製品のみを市場に流通させる義務を定めます。
注2 ベビーカー と三輪車が一体となっている乳幼児向け製品です。子どもの成長に合わせて、使い方を変えることができます。日本でもアマゾンなどで販売されています。
注3 消費者保護及び自由・公正な競争のルールを定める初めての包括的な立法です。2010年の豪州競争消費者法の前身となります。
以下、設立当初から、チョイスが重要視してきた「消費者安全」というテーマに絞り、2020年の2月から7月まで発行された『チョイス』の中から情報をピックアップしてみました。ここで、一部を紹介します。
*一部の情報は、会員ログインが必要
2020年2月号から〜
・製品安全関連法の強化を要請
チョイスは、豪州政府に対して製品安全関連法の強化を要請しています。背景には、家庭内でよく使われる製品による子ども(特に乳幼児)の怪我や死亡の事故、およびリコールされている製品(製品全般)の未回収率の実態があるようです。
チョイスによると、保護者にとって、玩具の小さな部品による子どもの誤飲の事故は想定しやすいでしょう。一方、家庭内で使用するごく一般的な商品も、誤飲のリスクがあるにもかかわらず、そのリスクを意識されないため、重症・死亡の事故を起こしています。例えば、ボタン式乾電池はその典型例です。
最近、乳幼児のボタン式バッテリーによる誤飲事故への対策として、豪州規格団体(Standards Australia)は、規格策定に着手することを表明しています。しかし、当団体が策定するのは原則的に任意規格となります。そのために、任意規格を採用するかどうかの判断は、各製造者の裁量に任されます。任意規格の義務化は、可能ですが、国や各州政府の権限行使に任されます。
チョイスは、さらに、リコールされている製品の未回収率を問題視しています。製品の回収件数は、1998年以降、4倍にも増えているのに、豪州競争消費者委員会(消費者行政の連邦機関=ACCC)の推定では、回収の対象となっている商品の約半分は、まだ回収されていないのが、大きな問題であるとしています。
チョイスは、上記の実態を踏まえ、製品全般の安全を強化するために、豪州法にない一般安全規定(注1)の導入を要請しています。そうすると、事業者が製品を流通させる前に、製品安全を確保することが義務となる、と指摘しています。
・海外から購入する製品の安全への注意
チョイスは、海外旅行中に、あるいはオンラインで製品を購入する動機として、低価格であることや、国内製品にはない特徴があることが挙げられます。しかし、中に模倣品や国内外で販売禁止・リコールの対象となっている製品、及びオーストラリアの製品安全基準を満たしていない製品があるから、消費者は慎重に製品を選ぶべき、としています。
・国内外の行政機関及び消費者団体の公開情報に基づき、次の5種類の製品を購入する際、安全性の確認を呼びかけています。
*乳幼児・小児向けの玩具
*乳幼児用製品
*USB充電器、旅行用の海外変換プラグ、モバイルバッテリー
*化粧品
*ダイエット用の医薬品、食品、機械
2020年5月号から〜
・ボタン式バッテリーの安全〜 続報
チョイスは、3月に豪州競争消費者委員会(ACCC)が安全基準の義務化(mandatory standard)を含む規制方法の検討に着手したことを喜んでいます。チョイスでは、長きにわたる活動で、設計及び製品情報についての安全基準の導入を要請してきました。今後の動向を注視する、とのことです。
・ストローラー トライク(ベビーカー と三輪車を一体となっている)の安全性
チョイスがストローラー トライク(注2)の製品テストを実施し、2/3の製品について、義務づけられているベビーカーの安全基準を満たしていないとの結果が出ました。チョイスは、この情報を規制当局(ACCC)と共有しました。
つづき...(会員ログインが必要)
2020年7月号から〜
本号は、チョイスの設立60周年を記念し、重要な活動分野となっている製品安全についての特集記事を掲載しています。
・チョイスのこれまでの業績のトップ5を紹介さしています
1) 1974年に制定された、取引慣行法(Trade Practices Act)の設立に貢献したこと(注3)。
2) 2005年に、12種類のベビーベッドの製品テストを実施し、5種類のベビーベッドが強制規格を満たしていないことと、2種類のベビーベッドが辛うじて合格している、とのテストの結果を公表しました。この結果を受けて、政府は2006年に常設専門委員会(Productivity Commission)に製品安全関連法規の見直しを委託し、その結果、2008年に製品安全を強化するための措置を承認しました。
3) 1967年に、チョイスが子供用パジャマの製品テストを実施し、パジャマの引火性の問題を発覚しました。この結果は、情報の開示(低又は高引火性の義務表示)を義務付ける強制規格の策定につながりました。
4) チョイスの調査により、加熱しながら混ぜたりできる多機能を持つ調理機器(当時のThermomix TM31)の部品の不具合により、火傷の事故が多発していることを判明しました(87名中、45名が怪我をし、その中の17名に治療が必要でした)。また、事業者に返金を求めた購入者から、威圧的な対応を受けた情報を収集しました。つづき...(会員ログインが必要)
5) タカタ製造のエアバッグのリコール
チョイスは、2017に自主的にリコールされていた当エアバッグの回収状況を調査し、不十分な点を指摘しました。この調査結果を受けて、連邦政府は史上最大級の強制的リコールを命じました。その後も、チョイスが引き続きリコール状況をフォローしています。2020年3月の時点で、20万個のエアバッグが交換作業を待っており、2020年12月まで、完成する予定となっている、とのことです。
チョイスは、今まで、多くの支援をいただきながら、製品安全の強化に貢献してきたが、まだまだやるべきことを指摘しています。例えば、長年チョイスがボタン式バッテリーの危険性を注視しています。2013年以降、子ども2名が死亡事故の他、たくさんの子どもが誤飲により怪我をしています。最近の製品テストでは、17種類の家庭用品中、ボタン式バッテリーがついている10種類の製品について、子どもが簡単に取り出し誤飲する可能性があるから、安全性に欠けていることを公表しています。
つづき...(会員ログインが必要)
・子どもと家具の転倒事故について
オーストラリアでは、毎年、家具やテレビの転倒により、病院で治療を受ける必要のある怪我人は、約2,500人にも上ります。イケア社は、2017年に行った、死亡事故を起こしたタンスをリコールするとともに、消費者向けへの注意喚起の公表活動を行ったため、ある程度、タンスの安全性に関する一般消費者の意識が高まってきています。
チョイスは、様々なリスクがあることを知っていても、どの程度の消費者が壁に固定しているのか、を調べるためにアンケートを実施しました。その結果は、テレビや本棚を固定する消費者は、半数以上(テレビは64%、本棚は58%)ですが、チェスト・タンスなどの家庭内家具の固定率が少ないこと(チェストは21%、タンスは18%)でした。固定しない主な理由として挙げられたのは、子どもやペットがいないこと(持ち家の人の55%)、家具や壁への変更が賃貸契約上、認められないこと(借りている人の58%)です。
一方、半数以上の回答者(65%)は、安全で安定している家具のデザインの責任は、生産者側にある、と考えています。チョイスは、製品安全についての一般規定の導入を要請しています。
・オンラインマーケット市場と子ども向け中古品の安全について
チョイスによると、2019年に、オーストラリアで販売された約9,500万個の中古品のうち、78%のものがオンラインで販売されました。Facebook Marketplace, Gumtree, eBayのようなオンライン市場は、利用方法が簡単で、無料のプラットフォームを提供していますが、一方、利用者としてリスクがあることを意識する必要があります。通常の小売店販売なら、リコールの対象となっている製品が流通しないように事業者が迅速に対応できるが、個人売り手の場合は、販売しようとしている製品はリコールされていることすら把握していない可能性があります。
チョイスの調査では、安全性に欠けている製品は、オンラインマーケット市場において広く販売されていることが判明しました。また、上記の複数のオンライン市場を中心に、リコールの対象となっている子ども用製品を検索し、見つかった製品の名前と問題点を公開しました。
つづき(会員ログインが必要)
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注1 欧州法(一般製品安全指令=GPSD)にあるように、製造者に対して、安全な製品のみを市場に流通させる義務を定めます。
注2 ベビーカー と三輪車が一体となっている乳幼児向け製品です。子どもの成長に合わせて、使い方を変えることができます。日本でもアマゾンなどで販売されています。
注3 消費者保護及び自由・公正な競争のルールを定める初めての包括的な立法です。2010年の豪州競争消費者法の前身となります。