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ミツバチの保護を目的とした農薬の規制について〜 欧州と日本の取り組みを比較して

8/19/2021

 
ミツバチは、世界中で、樹・野菜の授粉、ハチミツの生産等に活用されている、非常に重要な昆虫です。しかし近年、ミツバチの減少が問題となり、EUでは、ミツバチ保護のために一部の農薬の使用を制限し、欧州の消費者団体はその措置を評価しています。その背景を調べ、日本の実情とも比較してみました。
          
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EU司法裁判所は2021年5月、ミツバチに危害を加えるネオニコチノイド系農薬の使用を規制する欧州委員会の決定に法的誤りはないと判断し、控訴を棄却しました。この訴訟は、2013年に欧州委員会による、イミダクロプリドなど3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外での使用禁止措置について、当該農薬の屋外での使用を禁止すると、農家がより危険な農薬を使わざるを得なくなるとして、農薬と種苗のメジャーであるバイエル社とシンジェンタ社が、禁止の差し止めを求めていたものです。

欧米では、ミツバチが越冬できずに消失したり、働き蜂が女王蜂や幼虫などを残したまま突然いなくなりミツバチの群が維持できなくなるという、「蜂群崩壊症候群」(以下、CCD)が多く報告されており、CCDに危機感を抱いている欧州の環境団体や消費者団体はこの決定を歓迎しています。フランスの消費者同盟連合(UFCク・シュワジール;以下、UFC)*注は、1998年に問題を提起し、この農薬の使用禁止を訴えてきたので、今回の判決は8年間の法廷闘争を経た、ミツバチ保護のための素晴らしいニュースだと述べています。CCD を含むミツバチの減少の主な要因として、「ダニ等の寄生虫や害虫」「病気」「栄養不足」「農薬」「周辺環境の変化」「異常気象」などが挙げられており、いくつかの要因が複合的に影響していると考えられています。

このミツバチの減少の対策として、欧州委員会は2013年、それまで使用が許可されていたネオニコチノイド系農薬のイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムについて、ミツバチに有害であるとして一時的に屋外での使用を禁止し、更に2018年12月から、これを正式に禁止しています。

農水省によると、欧米では農薬は、種子の表面に農薬を付着させる「種子処理」や、粒状の農薬を作物ではなく土壌に散布する「土壌処理」での使用が一般的ですが、種子にコーティングされた農薬が剥がれ落ちたり、土壌処理の際に粒状の農薬が壊れたりして、農薬の混じった土が粉塵状に巻き上げられ、花に蜜や花粉を集めに来ていたミツバチに付着し被害が生じる可能性があります。

このような懸念から、欧州委員会から依頼を受けたEFSA(欧州食品安全機関)は、この3 種類のネオニコチノイド系農薬の評価を実施、その結果を受理した欧州委員会が、それまで種子処理や土壌処理に使用可能であったこれらの農薬について、2013年、穀物や、ミツバチが好んで花を訪れる作物に関して、種子処理、土壌処理または直接的な散布による使用を禁止したものです。

欧州委員会は、この判断は「予防原則(precautionary principle)」に基づくものとしています。欧州委員会によれば「予防原則」とは、環境または人の健康への危険に関する科学的証拠が不確実であっても、危険性が高い場合には意思決定者が対策や規制を採用することができるとされています。またEU司法裁判所は、予防原則について、経済的利益よりも公衆衛生、安全および環境の保護に関連する要件を優先すると述べています。

一方日本では、7種のネオニコチノイド系農薬が承認されており、それらはカメムシや、アブラムシなどの害虫に優れた防除効果があるので、稲、果樹、野菜などの害虫防除に不可欠なものとなっています。しかしながら、日本ではネオニコチノイド系農薬を、水稲の育苗箱に使用したり、作物の茎葉へ散布したりするのが一般的で、欧米のように粉塵が広範囲に巻き上がるような方法の播種は行っておらず、粉塵についての懸念はほとんどないため、使用の制限はありません。
他方、日本でもCCDには至らなくても、ミツバチの被害は発生しています。被害の発生は、水稲のカメムシを防除する時期に多く、巣箱の周辺で採取された死んだミツバチからはカメムシ防除に使用する殺虫剤が検出されたことから、ミツバチが、それらの殺虫剤を直接浴びた可能性が高いと考えられています。

そこでミツバチに対する毒性が比較的強い農薬には、その旨を注意事項として、ラベルに表示されています。加えて、養蜂家は季節によって花のある地域へと巣箱を移動させることがあるので、農薬を使用する農家と養蜂家との間で、巣箱の位置および設置時期や、農薬の散布時期などの情報を交換し、巣箱を退避させるなどの対策をとっています。
さて、ネオニコチノイド系農薬の毒性についてですが、昆虫には高い毒性を持ちますが、人や哺乳類には毒性が低い、いわゆる「選択毒性」を有しています。それ故、他の殺虫剤に比べて人に対する毒性が弱いので、農業従事者や、ひいてはその農産物を食べる人の健康影響が小さいとされ、また、水生生物に対する毒性も弱く、水田の下流に位置する河川や養魚池などへの影響を心配する必要もないとされています。加えて、油脂にとけにくいため、畜産物の脂肪中への残留が少ない等の利点があります。

話をまた欧州に戻します。EUでは前述したように、2013年以降、3種のネオニコチノイド農薬の屋外散布を禁止しているのですが、農家はどのように対応しているのでしょうか。調査の結果では、対象の農産物や国の違いにより対応は異なるものの、使用を禁止されていない他のネオニコチノイド系農薬、またはピレステロイド系農薬で処理された種子に切替えた農家が多いようです。

また、EUには農薬の緊急認可制度があり、被害が生じても他に合理的な手段がないと判断した場合には、120日以内に限って使用が認められており、EUの加盟国、ルーマニア、ブルガリア、リトアニア、ハンガリー、フィンランド、ラトビア、エストニアは主要作物への緊急認可を何回も申請しているという事実があり、使用禁止措置後もネオニコチノイド系農薬の使用量は減少していないようです。

一方、フランスでも2020年12月、アブラムシの大きな被害に遭っているサトウキビ農家に対し、憲法評議会は、ネオニコチノイド系農薬を3年間に限り使用することを承認しました。これに対してもUFCは、「ネオニコチノイド系農薬はアブラムシの防除に有効ではあるが、テントウムシ等の、いわゆる生物農薬(天敵など)の検討をすべきである」旨の専門家の意見を紹介し、本当に他の選択肢はないのかと、疑問を投げかけています。

欧州の予防原則を適用したネオニコチノイド系農薬の使用規制に比べると、日本の規制は緩いように思えます。しかし今回紹介したように、EU諸国でも、農業の現実はそれ程生易しいものではないようです。また、日本の夏は高温多湿で、平均気温は欧州と比較して10℃ほど高いため、虫の被害は、極めて厳しい状況にあることは間違いありません。将来的には地球の温暖化によって、ますます厳しい状況になる可能性もあります。ミツバチの被害とその対策としての農薬の規制を通して、持続可能な農業、環境にやさしい農業のあるべき姿を、考えていきたいと思います。
                                                                                                                                         (消費者ネットジャパン理事 南澤)
 

*注
 UFCク・シュワジール(UFC-Que-choisir)〜1951年に設立されたフランスを代表する消費者団体。会員数138,000人、傘下にフランス全土で140の団体を有する。ハイテク、家電、自動車、健康、保険、食品、農業、環境など幅広いテーマを扱う。消費者の権利が侵された場合には、訴訟で対応する。
 
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主な参考文献:
・Pesticides tueurs d’abeilles - Une interdiction enfin définitive ! - Actualité - UFC-UFC-Que Choisir
・Ré-autorisation des néonicotinoïdes - Vraiment pas d’alternative ? - Actualité - UFC-UFC-Que Choisir
・General Court of the European Union, PRESS RELEASE No 68/18, Luxembourg, 17 May 2018
・ DÉCISION N° 2020-809 DC DU 10 DÉCEMBRE 2020, CONSEIL CONSTITUTIONNEL
・The precautionary principle, Definitions, applications and governance, December 2015, European Perliament
・農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組, 2016.11月改訂, 農林水産省
・J. Kathage et al., Pest Manag Sci 2018; 74: 88–99

海洋マイクロプラスチックごみ問題を考える            ~レジ袋の有料化をきっかけに〜

11/13/2020

 
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私たちの日常生活に溢れるプラスチック─軽い・強い・価格も安い、さらに成形しやすく透明、とまさに何拍子も揃った、非常に便利な素材として、製品そのもの以外に、ビニールや発泡スチロール等の包装や梱包・緩衝材等にも幅広く使われている(注;家庭ごみの容積比6割超が容器包装、うち約5割がプラスチックごみ;2018年度)。

プラスチックの多くは、ごみとして“使い捨て”され、利用後、きちんと処理されず、環境中に流出してしまうことも多い。手軽に使える分、手軽に捨てられてしまう。環境中に流出したプラスチックごみが、河川を経由して、最終的に行きつく場所が「海」である。

 
海洋中の5ミリ以下の微細なプラスチックごみ(以下、プラごみ)は「マイクロプラスチック」と呼ばれ、すでに世界の海にプラごみは、合計で1億5,000万トン存在するといわれ、さらに少なくとも毎年800万トン(重量ではジャンボジェット機5万機相当!)ずつ、新たに流入しているという。それらは、生態系等や居住環境に及ぼす影響、船舶航行への障害、観光・漁業への影響等が懸念され、その海洋汚染対策が、ここ数年、喫緊の国際的課題として注目されている。
 
 ダボス会議で知られる「世界経済フォーラム」発表によれば、現在海へ流入している海洋プラごみは、アジア諸国由来のものが、全体の8割超を占めるとされ、発生国のベスト3は、中国・インドネシア・フィリピン等、日本の近隣のアジア諸国である。

世界のプラスチックの年間生産量は、過去50年で20倍に増大し、今後も、3億1,100万トン(2014年)から2050年には11億2,400万トンと約4倍に増大する見込みで、その時点で“海洋プラごみの量が海にいる魚を上回る”というショッキングな予測が発表されている。これらを受け、世界各国でファストフードやスーパーの樹脂製ストロー、レジ袋の提供禁止等、使い捨てプラスチック対策が急拡大している。
 
日本でも2020年7月から経産省と環境省は、容器包装リサイクル法の省令改正により、原則、すべての小売店でのレジ袋の有料化を義務化する法律が施行された。
 
レジ袋有料化から見える消費者意識、日本のプラごみの現状、削減のために私たちが取り組むべき課題について考察した、「オレンジページくらし予報」という女性誌アンケート調査(※)では、今まで無料だったものが有料になったにもかかわらず、「レジ袋の有料化」に約8割が賛成と回答し、その理由のトップ「プラスチックごみの削減につながる」が約7割に上っている。 (※) https://www.atpress.ne.jp/news/227120 : 調査対象は、国内在住の20歳以上の女性約1.700名。
 
一方で、プラごみ問題の現状への正しい理解はまだまだ進んでいない。例えば、日本が廃棄しているプラごみの量が1人当たり年間32kgで、世界ワースト2位(出所:国連環境計画(UNEP)2018年報告書)であるが、この事実を知っている人は約2割、海洋汚染を引き起こす「マイクロプラスチック」という言葉の意味まで知っている人は約3割と、世界的な問題として注目されているわりに少なく感じられる。一方で、今回の有料化をきっかけに「プラごみ問題への関心が高まった」は9割超と大変高く、問題解決に向けた前向きな姿勢が感じられる。
 
環境に負荷をかけた、持続可能とはいえない経済発展が続く限り、海洋プラスチック問題も、今後さらに拡大するだろう。日本は、1人当たりの容器包装等プラスチック発生量が世界第2位、プラスチック生産国としては世界第3位であることを国民1人1人が自覚し、海洋プラスチックごみ問題への責任ある対策が求められる。

世界的にコロナ禍の収束が見通せない中、レジ袋有料化による削減が始まった一方で、飲食店からのテイクアウトの増加など、プラスチック容器削減が難しい状況が続く。

海洋プラごみ問題に関連したSDGsとしては、14番目の目標「海の豊かさを守ろう」が挙げられるが、2019年6月、大阪市で開催されたG20サミットでも、2050年までに新たな海洋プラスチックごみによる汚染をゼロにする目標を掲げた「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を世界各国の首脳が共有している。行政や企業だけでなく、私たち消費者が三位一体となって知恵を出し合い、今こそ問題の深刻さを意識し、日常生活を見直し、解決に取り組むときではないだろうか。


                                       (じゃこネット理事 大西 慧子)
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フランスの消費者団体の新型コロナウイルス危機への対応〜 消費者向けに発信した最近の情報

9/17/2020

 
Fédérale des Consommateurs (略称;UFC-Que Choisir)は、1951年に設立され、会員数約14万人、雑誌購読会員50万人、139の地方組織を持つフランス最大の消費者団体です。UFCは幅広い商品、サービスの詳細な研究や比較テストを行っています。パリの本部では、約140名の従業員が、ウェブや紙媒体での出版、法的問題、ロビー活動等に取組んでいます。
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今回のブログでは現在の新型コロナウイルスの大流行において、UFC-Que Choisirが行っている消費者向けの情報の概要を紹介します。                            
 
フランスでの新型コロナウイルス感染状況は、2月末には1日当りの新規感染者数が40人程度でしたが、3月30日には7,500人余と急激に増加しました。その後減少し、一時は数百人程度となりましたが、7月初旬から再び増加し、8月23日には新規感染者が約4,900名、累計では感染者 約24万人、死亡者 約3万人となっています。
 
さて、UFC-Que Choisirはこの危機的状況において様々な活動を行っていますが、消費者に必要な情報については、ウェブサイトを中心に多数発信しています。2月に第1報を発信した後、感染者数が急増した3月、4月、5月にはそれぞれ、41件、69件、36件と増加、8月25日までに合計で186件発信されています。

その内容としては、下表に示すように、航空券と旅行のキャンセルへの対応が最も多く、次いでマスク関連、感染予防・自己診断、消毒方法、治療薬…と、新型コロナウイルスの感染に直接関係ある項目が続きました。フランスでは3月17日から5月11日までの8週間、都市封鎖が行われたため、日本国内とは異なる優先順位、異なる対応と思われるものも少なくありません。この中でいくつかの興味深い情報についてその概要をお知らせします。
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​1 欠航便の払戻しに関する航空会社57社に対する通知 
           
今回の新型コロナウイルスの大流行での航空便の欠航や旅行のキャンセルは全世界的な問題ですが、フランスではそれが大きな社会問題に発展しています。それに対しUFC-Que Choisirは消費者保護の観点から、以下のように対応しています。
                       
UFC-Que Choisirが航空会社76社の対応を分析した結果、欠航便の航空券代を即座に払い戻したのは21社のみで、他の57社は、バウチャー等を配布し、払戻しを行っていません。欧州規制では「フライトがキャンセルされた場合、航空会社は最初の選択肢として、7日以内に購入価格での航空券の払戻しを提供する必要がある。」と明確に記載しています。さらに欧州委員会は、「航空会社がバウチャーを提供する場合、この提案は、乗客の払戻しを選択する権利に影響を与えることはできない」としています。従って航空会社は消費者にバウチャーの受取りを強制することはできません。
 
UFC-Que Choisirは、払戻しに応じない57社の社名を公表するとともに、乗客が航空会社に、払戻を請求するためのメールのテンプレートを提供しています。
出典:Vols annulés L’UFC-Que Choisir met en demeure 57 compagnies aériennes  4月24日掲載

 
2 自動車/オートバイおよび保険220万ユーロが保険契約者に還元されます!

フランスでは8週間に渡り都市封鎖され、自動車の運転が認められなかったため、交通事故が激減しました。UFC-Que Choisirは、事故激減により自動車保険支払の為の積立金が大幅に積み上がったとして、その分を消費者に還元することを求める活動を行っています。
                       
3月17日に始まった都市封鎖は消費者を経済的に圧迫しています。仕事量が減少した企業の従業員のみならず、多くの自営業者、零細起業家らも含め、収入が減少した上に家賃、ローンの返済、保険などの支払い等の維持費がのし掛かっています。
 
一方で、都市封鎖以降、自動車による人身事故の頻度は91%減少しました。UFC-Que Choisirは、保険金の支払額の減少により140万から230万ユーロが保険会社の積立金に上乗せとなる可能性があると推定しています。この状況を鑑みUFC-Que Choisirは、保険会社の積立金の蓄積分に見合う保険料の削減を求めています。試算では、これを実行すれば220万ユーロの会費が削減され、1台当りでは、車で50ユーロ、オートバイで29ユーロの削減となります。法律では保険契約者は契約期間中のリスクが減少した場合に保険料の額を減らすことができると法律で規定されており、これは完全に正当な要求です。
 
UFC-Que Choisirは保険料を引き下げることにより、自動車保険会社の積立への上乗分を分配することを経済保険大臣に求めます。その間、消費者が保険会社に保険の支払額の低減を要求することができるように標準的なメールのテンプレートを提供します。
出典:Assurances auto/moto et Covid-19 2.2 milliards d’euros à rétrocéder aux assurés ! 20年4月27日掲載

 
3 マスクは新しい社会生活の不可欠な部分
                               
フランスでは今まで、日常的にマスクをつける習慣はありませんでしたが、今回の新型コロナウイルスの大流行で、多くの人がマスクをつけるようになりました。このマスクについてUFC-Que Choisirは会員に向けてのアンケート調査を行っています。以下が7,160人の回答の概要です。

1)どのような種類のマスクを使用しますか?
 43%の人が店頭販売のマスクを見つけられませんでしたが、自家製の布製マスクを作った人が53%いました。店舗購入に加え、最寄りの自治体からも布製マスクを提供されたので、4分の3の人が布製マスクを持ち、38%の人は使い捨ての手術用マスクを持っていました。両方を使用している人もいました。ただし、12%の人はマスクを着用していないと回答しました。
2)マスクの着用
フランス人はマスクに慣れていません。今までは、冬のインフルエンザの流行中でも、マスクは推奨も着用もされていませんでした。しかし今では、90%の人が快適でないと感じているにもかかわらず、80%の人が義務化するべきと考えています。
30%の人は「常に着用」し、26%は外出時に「できるだけ頻繁に着用」しますが、23%は「時々着用」し、残りの21%の人は習慣を変えず「着用していません」。平均して週に1時間30分マスクを使用しています。これはおよそ買物に必要な時間に相当します。
3)マスクの適切な使用
マスクの着用が有効かどうかは、マスクのろ過能力に左右されますが、使い方も重要です。大多数の人は、着用前と外した後の手洗が不可欠であることを理解しています。さもなければ手で汚染されてしまいます。マスクの管理については、布製の場合、42%が常に洗濯しています。
 
洗濯はコロナウイルスの不活性化に効果がありますが、効果を確保するためにはお湯、石鹸または洗剤の使用、および機械的な摩擦作用の3つが重要です。ウイルスの不活性化には60℃を保つことが重要ですが、洗濯機を使用する場合、60℃が保たれているかなど分かりませんし、幾つかのマスクだけの為に、洗濯機を回すことも不経済です。

なお、使い捨ての手術用マスクについては、4分の1の人が使用後は直ちに捨てると答えています。
出典:Masques Un incontournable de notre nouvelle vie sociale  2020年5月19日掲載 


4 食品ラベルはもはや信頼できません!

現在の新型コロナウイルスの大流行において、日本でもアレルゲンや消費期限等、消費者の安全に関わる項目を除き、原材料や原産地等、食品表示のルールが緩和されていますが、フランスでも同様の措置が取られています。この動向に対して、UFC-Que Choisirは運用緩和を認めた、競争・消費・不正防止総局(DGCCRF)を批判しています。 
                      
新型コロナウイルスによる危機下において、食品の供給が困難となっているため、食品会社は、ラベルを変更することなく、食品のレシピを変更するかもしれません。これは、競争・消費・不正防止総局(DGCCRF)による例外的な「許容度」によるものです。
 
DGCCRFは、「このような短期間でラベルの変更に対応することは実際に不可能であり、包装材製造業者の活動自体が新型コロナウイルスの危機の影響を受けている」ことを理由に正当化し、この緩和措置は「消費者の安全を危険にさらさない小さな変更」のみに認められるとしました。また、アレルゲンの表示に関して、DGCCRFは、「表示の対象となっているアレルゲンは、ラベルへの記載無しにレシピに加えることはできません。」と説明しています。
 
それでもなお、消費者に対する透明性の問題が残っています。実際、DGCCRFは、「レシピの変更が製品の本質的な品質に大きな影響を与える場合、その情報は、売場においても、Webサイトも、消費者に伝えられなければならない。」としていますが、それらの製品が速やかにWebサイトに掲載されることを保証するだけです。
 
しかしながら、DGCCRFが示す「大きな影響」とは、どういう意味でしょうか?また製造業者は、すべての場合において、自社のWebサイトで新しいレシピの詳細を提供する必要があるのでしょうか?危機が継続する状況下、公式の品質標識表示であるラベル・ルージュ(高品質表示)、AOP(原産地保護呼称)、IGP(地理的保護表示)においても、約50の製品の仕様の暫定的な変更がINAO(国立原産地・品質研究所)によって許可されています。
出典:Produits alimentaires On ne peut plus se fier aux étiquettes !  2020年5月6日掲載
                                                                                                                                     
                                                                                                            (じゃこネット理事 南澤 陽一)

 
南澤理事のコメント〜 航空券の払戻しや自動車保険料金の還元など、新型コロナウイルスの大流行によって、今まで予想もしていなかった問題が発生していることが日本でも報道されていますが、これらの対応にUFC-Que Choisir等、欧米の消費者団体の活動が貢献しています。消費者団体の規模が異なりますが、日本の消費者団体として、私たちが学ぶところが数多くあることを実感しました。

「第2回世界食品日」 バーチャル・イベントで議論

7/1/2020

 
​国連は2018年の国連総会で、毎年6月7日を「世界食品安全の日」とすることを採択しました。昨年の第1回に引き続き、FAOとWHOの共催で、今年も第2回の「世界食品安全の日」にちなむ活動が計画されました。
FAOとWHOは「食品安全はみんなの仕事」のスローガンの下、食品安全の持続的変化のために、農場から食卓まで(farm-to-fork)の連続的な安全を保つための5つの行動指針、①食品の安全を確実に、②安全な農業、③加工と輸送の安全、④安全に食べる、⑤安全のための連携、を提唱しました。
そして「世界食品安全の日」にちなんだ、イベントやレクリエーション、スポーツ活動等を実施し、若い世代を引き込むとともに、メディアを巻き込み「世界食品安全の日」のメッセージの拡散する様、世界各地に呼びかけました。
 しかし今年は残念ながら、世界的な新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)により、大規模なイベントの実施が不可能となりました。そこでFAOとWHOは各地でバーチャル・イベントの開催を呼びかけ、世界各地で種々の活動が行われましたので、その一部を紹介します。
 欧州食品安全局(EFSA)は6月8日、食品安全に関するツイッターQ&Aを開催しました。質問には、EFSAの事務局長ベルンハルド・ウール氏と、コーデックス書記のトム・ハイランド氏がオンラインでライブ回答しました。
 FAO北米支局は6月14日、「新型コロナウイルス時代とそれ以降の食品安全」と題したオンラインセミナー(ウェビナー)を主催しました。食品安全に関する多くの専門家が講演やパネリストとして参加しましたが、その中にはWHO事務局長補の山本尚子氏も含まれています。
 一方アジア太平洋地域では、OIE(国際獣疫事務局)、WFP(国連世界食糧計画)も共催に加わり6月5日、「新たな標準における食品安全」と題したウェビナーを開催しました。アジア太平洋地域の国々からの専門家が、今後数年間で取り組むべき食品安全の優先課題について議論しました。
 一方、消費者団体もこの「世界食品安全の日」にあわせ、多くのツイートなどを寄せています。英国の消費者団体“WHICH?”のスー・デイビス氏は、CIの「世界食品安全の日」の特集への寄稿(注1)として、英国が新型コロナウイルス対策として、国を封鎖した時の食料不足について述べ、特に経済的困難に直面している脆弱な人々にとって、必要な食料を手に入れることができるように、政府と食品セクターのさまざまな部分の間でより効果的な調整を確実にしたい、と述べています。
 
                                       (じゃこネット理事 南澤 陽一)
 
南澤理事のコメント〜 今年の「世界食品安全の日」は、新型コロナウイルスのパンデミックにより、予定していた活動がでなかったことは残念でした。しかし、このパンデミック下、またそれ以降に、食品安全に関して実施すべき課題を、ウェビナーなど新たな手法で議論することが出来、歴史の転換点に立った有意義な活動ができたと思います。(文責:南澤)
 
注:
1. https://www.consumersinternational.org/news-resources/blog/posts/world-food-safety-day-2020-food-trade-and-future-uk-food-policy/
 

はじめての「世界食品安全デー」を世界中で祝う

7/25/2019

 
日本では食品が安全であることは当然の事ですが、世界では安全でない食品を摂取することにより食中毒になり、命まで落としてしまうことが少なくない様です。そのような食中毒を減らしていくため、国連が「世界食品安全デー」を設定しました。WHO(世界保健機関)は、6月7日にその啓発と実行に努力するとの内容のニュースをウェブサイトに搭載しています(以下は訳文)。
     
「2018年12月、国連総会は初めて『世界食品安全デー』を採択し、2019年6月7日に「食の安全は皆の仕事」というテーマでお祝いを行いました。WHOは、FAO(国連食糧農業機関)と協力し、今年から数年間、加盟国に『世界食品安全デー』をお祝いするよう促すとしています。
 
安全で栄養価の高い食物を十分に確保することは、生命を維持し健康を促進するための鍵です。食品由来の疾患は健康管理システムの負担となり、国民経済、観光、貿易に悪影響を与え、結果として社会経済の発展を妨げます。毎年推定6億件の食中毒が発生しており(世界の10人に1人が汚染した食事によって病気にかかっている計算となります)、食品の安全性は人間の健康への脅威となっています。 食中毒の罹患者の40%が5歳未満の子供であり、毎年12万5千人が死亡しています。
 
食品安全はSDGs(国連の持続可能な開発目標)の幾つかの目標達成の鍵であり、政府と事業者(生産者)、消費者で共有すべき責任です。私達が消費する食品が、農場から食卓まで安全で健康を損なうことのないように供給されるため役割を誰もが担っています。WHOは『世界食品安全デー』を通じて、食品安全を公共の主な議題することと、世界の食品由来の疾患の負担の軽減のために努力を続けています」。
 
**感想**
2018年12月、国連でこの決議がなされた同じ日には、2020年を「国際植物健康年」(The International Year of Plant Health)とすることが採択されています。食料の安定確保には、植物を害虫や病気から守り健康に保つことが重要であるという内容で、FAO(国連食糧農業機関)が担当しています。限られた資源を有効に使用して人々の健康を確保していくことは、持続可能な地球環境、社会を作るうえで基本となるもので、SDGsの観点からもWHOおよびFAOのこれらの取り組みは重要であると思います。(南澤陽一)

 
<英語原文>
 
⭐️https://www.who.int/news-room/events/detail/2019/06/07/default-calendar/celebration-of-world-food-safety-day

「アメリカ、最新デジタル通信事情からの気づき」

5/31/2019

 
Consumer Reports MAY 2019 に気になる記事がありました。
In 2018, a record 48 billion robocalls were placed to phones in the U.S., according to YouMail, a company that blocks and tracks robocalls.
デジタル先進国のアメリカで、2018年の自動音声電話によるコールが、調査会社によると(なんと!)年間480億回を記録したとのことです。
こうした状況にアメリカ連邦取引委員会(FTC)は、違法なロボコールへの対策を強化してきました。また最近では対策のアプリなども開発されてきています。
ちなみにConsumer Reportsは昨年の6月号では、PROTECT YOURSELF FROM SCAMS のタイトルで、デジタル機器を使った詐欺への対策の特集も組んでいます。
一方日本では国民生活センターが、毎年1回発行している「くらしの豆知識」で、2018年版「ネット活用の心得」、2019年版「悪質商法の手口紹介」という内容で注意を呼びかけてきました。
今やデジタル市場関連領域でのこうした消費者問題対策が、ワールドワイドに急務とされる時代になったと言えるでしょう。(井澤智史)
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