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気候危機を考える (2) ~若者の地球環境意識の高まりと脱炭素アクション

12/6/2021

 

COP 26で浮き彫りになった「気候危機」と世界の取組みの現状評価 

​2021年10月末~11月13日、英国グラスゴーで開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)では、COP 21「パリ協定」で締結された、産業革命からの気温上昇を1.5℃以内に抑える努力を追求し、その実現のために石炭火力発電を段階的に削減する、2022年までに2030年の排出削減目標を各国が再検討する、また先進国が途上国向けに年1,000億ドル以上の資金援助を拡充することなどが合意された。

2015年採択された「パリ協定」が実行段階に入り、先進国VS途上国の利害の対立は埋まらない状況下で、米中対立などの政治的分断が影を落としている。カーボンゼロを目指し「気候危機」を回避するための先進国主導の議論は、今や限界を迎えている。国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」による最新の分析では、1.5℃以内に抑えるには、温室効果ガスを2030年時点で2010年比45%削減する必要があり、現状の取組みのままでは、13.7%増えると予測している。

COP 26に合わせて国際的な環境NGO「気候行動ネットワーク」では、“温暖化対策に消極的”と判断した国を選ぶ「化石賞」に、ノルウェー、オーストラリアとともに日本を選んだ。日本は2019年マドリードでのCOP25に続き、2回連続の不名誉な受賞となった。3カ国は削減目標が未達成であり、石炭等の化石燃料の使用を継続するなど、気候変動対策に後ろ向きと評価されたためで、日本はまだ実用化されていない水素とアンモニアを燃料とした火力発電を継続する(注1)という岸田首相の演説が受賞理由だった。

エネルギー政策は、太陽光・風力等の再生可能エネルギー(再エネ)導入拡大が世界の潮流だが、2011年福島事故以降、過半の原子力発電が停止する中、資源に乏しく、大半を輸入の天然ガス(LNG)・石炭・石油等による火力発電で電力の約8割を賄う日本は、資源小国であることに加え、再エネの設置に適した平地も限られ、EUのような国家間の電力融通がままならない島国というハンデを踏まえて、2050年脱炭素社会を目指すことになった。
 
国内外の若者の意識調査から見えてくるもの~地球環境意識の世代間・国別格差

2020~2021年、世界50カ国の120万人を対象に国連開発計画(UNDP)と英オックスフォード大学が共同実施した調査「みんなの気候投票(Peoples’Climate Vote)」では、回答者の64%が、気候変動を「地球規模の緊急事態」ととらえており、うち59%は「世界があらゆる手段を講じて至急対応すべき」と回答したが、「徐々に活動するのが良い」としたのは20%、「すでに十分な対策を実施済み」は10%だった。世界中の6割の人々から早急な対策による問題解決を望む声があがっている。

この調査は気候変動に関する史上最大規模の調査で、回答者の約4割、50万人以上を18歳以下の若者に設定したことは前例がない。14~18歳では全体の69%、約7割が「緊急事態」と認識しており、国別ではイタリア・英国が86%で最も高く、日本も81%と続く。ちなみに、60歳以上では「緊急事態」と認識している割合は58%であり、地球規模の「気候危機」を認識する割合が中高年層より18歳未満の若年層で2割超も高いのは、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが象徴する、1990年代半ば以降に生まれた「Z世代」を中心とした“脱炭素アクション”に繋がっている。国連気候変動サミットに合わせて行われた2019年9月20日、世界気候デモには。Z世代を中心に165カ国で400万人以上が参加、過去最大規模のアクションとなった。

世界中で若年層による脱炭素アクションが盛り上がりを見せる一方、気候危機によるメンタルヘルスへの負の影響として、「環境不安」「エコ不安症」の広がりが懸念されている。10カ国、1万人の若者(16~25歳)を対象とした英国の調査(英医学誌「ランセット」2021年9月掲載)では、全体の約3分の2が気候変動について「非常にまたは極度に心配」し、84%が「多少は心配している」ことが明らかになった。
 
“Think Globally, Act Locally”~今日から「地球市民」を目指そう!  

​地球上の資源は有限である。2018年に約76億人の世界の人口は、途上国の人口増大により2050年には97億人に達すると予想されている。「エコロジカル・フットプリント(人間生活が自然環境に及ぼす指標)」は、1970年代より「バイオキャパシティ(地球が生産・吸収可能な生態系サービスの供給量)」を超過し続け、2013年時点で地球1.7個分に達しているという。私たち人間が招いた気候危機を回避し、持続可能な社会を目指すためには、大量生産・大量消費・大量廃棄型社会の見直しが急務である。

1988年英国では“Think Globally, Act Locally”(地球規模で考え、足元から行動する)をスローガンに、消費者が消費行動を通じて企業に環境配慮を求める(=環境を優先した買い物をする)「グリーンコンシューマー(緑の消費者)」運動が始まり、世界に広まった。そして2000年以降CSRの普及により、倫理的観点から商品や企業を選ぶ「エシカル消費」、さらに近年は国連が提唱する「SDGs(持続可能な開発目標)」へと発展している。

今こそグリーンコンシューマーの原点に立ち返り、足元の日常生活を見直し、環境に配慮した省エネ型・循環型ライフスタイルへの転換が求められる。省エネ行動の実践のために、日々の生活の中での「環境情報」の収集、リテラシー向上も心がけたい。持続可能な地球環境のために、一人ひとりの消費者が「地球市民」として気候危機からの脱却に取り組める最後のチャンスかもしれない。私たちに残された時間は少ない。
​                                                                                                                                  
注:
1.  2021年10月5日(㈱)JERAと(㈱)IHIは、愛知県碧南火力発電所で、大型商用石炭発電機で燃料アンモニアを熱量比20%混焼する実証試験をスタートし、発電時にCO2を排出しないゼロエミッション火力の開発を開始している(「JERAゼロエミッション2050」参照)。

                                     (消費者ネットジャパン理事 大西 慧子)

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