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気候危機」を考える (1) ~日本人の地球環境意識の現状と課題

10/11/2021

 
「気候危機」の現状と日本人の地球環境問題への意識変化
​近年、世界各地で異常気象が頻発している。2021年夏、米国の南部では大型ハリケーンに襲われた一方、ロッキー山脈西部は干ばつに見舞われた。さらに、ブラジルやアフリカ各地では歴史的な渇水が発生したが、ドイツやベルギー等欧州各地では深刻な豪雨被害に見舞われた。ここ数年、日本や中国でも豪雨による甚大な土砂災害や洪水が頻発している。
地球温暖化によって、世界中の気候を変える「気候変動」が起き、自然環境に直結する農業分野をはじめ、人間生活に深刻な影響を与えることが明らかとなり、経済、社会、健康、人権、安全保障等、あらゆる分野に及ぼすリスクの深刻さは、単なる「気候変動」を超えて、今や「気候危機」(注1)と呼ばれるようになった。

四半世紀前、1997年「地球温暖化防止京都会議(COP3)」が京都で開催され、国内でも地球温暖化防止への関心が高まった。筆者は、地球温暖化の現状から低炭素社会のための省エネ行動の提案まで、わかりやすく伝えるための消費者向け小冊子や啓発資料を長年執筆、発信してきたが、20年前の日本では海外での熱波や洪水被害を訴えても切迫感がなく、どこか絵空事、他人事だった。
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ここ数年の国内での豪雨・台風被害の頻発、農水産業への影響に加え、世界各地での前例のない水害や熱波の発生を見聞きして、日本人の地球環境に対する意識はどんな状況にあるのか、最近の調査結果をもとに考察してみたい。
内閣府「気候変動に関わる世論調査」から見える日本人の地球環境への意識
同調査は、2020年10月26日、当時の菅(すが)首相が就任時の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)宣言」を発表、その直後に行われた調査である(2020年11月郵送法で実施、全国47都道府県の18歳以上を対象、有効回収数1767人)。同調査のうち、主な項目を見ておこう。

地球温暖化、オゾン層の破壊、熱帯雨林の減少などの地球環境問題について、平均すると8割超の人が「関心がある」と答えており、年代別では、年齢が上がるほど関心が高くなる一方、18~39歳までの若年層では、関心がないと答えた割合が2割を超えている。また、身近でどんな気候変動の影響を感じるか、といった質問には、特に「夏の暑さ」「雨の降り方の激しさ」について、40歳から70歳以上まで幅広い年代の8~9割が、影響を感じると答えている。その他、桜の開花などの植物の変化、冬の寒さや雪の降り方、セミの種類・鳴き声等の動物の変化まで、日本人は四季折々の自然環境を通してさまざまな変化を感じており、年齢が高くなるほど、変化を敏感に感じる割合が増えている。
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脱炭素社会の実現に向けて、二酸化炭素(CO2)の排出を減らす、脱炭素の取組みに対して「積極的に取り組みたい」「ある程度取り組みたい」を合わせると、すべての年代で9割以上の人が脱炭素社会に取り組みたいと答えている。実践している日常行動では「衣服の調節で冷暖房を適切に管理」「こまめな消灯」「省エネ型の家電製品の購入」等が大半を占めている(下記グラフ参照)。
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脱炭素社会をめざす消費者意識を拒むもの~若年層を中心に
​日本人の9割を超える消費者が、脱炭素社会の実現に取り組みたいと答えている一方で、年代別では40歳代以下、「18~29歳」「30~39歳」の若年層では約2割が「関心がない」と回答しているのも現実である。海外では、スウエーデンの10代の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが、2018年国連気候変動会議で地球環境の危機を訴え、欧米の若者の間で気候変動の学生ストライキなど、大きなムーブメントが起こったのとは対照的である、
次世代を担う日本のより多くの若者たちに、脱炭素社会をめざす取組みに関わってもらうために、脱炭素社会に(あまり、または、まったく)取り組みたくない、と回答した人に、その理由を聞くと、第1位・2位は、それぞれ「どう取り組めばよいか情報が不足している」「どれだけ効果があるのかわからない」であり、「経済的なコストがかかる」「日常生活で常に意識して行動するのが難しい」「手間がかかる」といった回答が続いている。

地球環境問題は、人類が被害者であると同時に加害者でもある。また次世代や途上国の人々に深刻な影響を及ぼすという意味で、グローバル時代の世界共通の最重要課題であり、最大の消費者問題ともいえる。次回は、地球環境問題を他人事でなく、我が事として考え、取り組むためのアプローチを考えてみたい。 つづく                
​                                                                                                                            
注:
1. 2019年、英ガーディアン紙は現状をより正確に表現するため、報道で「climate change(気候変動)」ではなく、「climate emergency, crisis or breakdown”(気候非常事態・危機・崩壊)」を使うと発表した。国内では2020年6月、環境省が「気候危機」を宣言し、2020年版環境白書で初めて、「気候危機」という言葉を明記した。

                                      (消費者ネットジャパン理事 大西 慧子)

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    このブログに掲載する原稿は執筆者個人の意見・情報であり、じゃこネットを代表するものではありません。

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