私たちの日常生活に溢れるプラスチック─軽い・強い・価格も安い、さらに成形しやすく透明、とまさに何拍子も揃った、非常に便利な素材として、製品そのもの以外に、ビニールや発泡スチロール等の包装や梱包・緩衝材等にも幅広く使われている(注;家庭ごみの容積比6割超が容器包装、うち約5割がプラスチックごみ;2018年度)。
プラスチックの多くは、ごみとして“使い捨て”され、利用後、きちんと処理されず、環境中に流出してしまうことも多い。手軽に使える分、手軽に捨てられてしまう。環境中に流出したプラスチックごみが、河川を経由して、最終的に行きつく場所が「海」である。
海洋中の5ミリ以下の微細なプラスチックごみ(以下、プラごみ)は「マイクロプラスチック」と呼ばれ、すでに世界の海にプラごみは、合計で1億5,000万トン存在するといわれ、さらに少なくとも毎年800万トン(重量ではジャンボジェット機5万機相当!)ずつ、新たに流入しているという。それらは、生態系等や居住環境に及ぼす影響、船舶航行への障害、観光・漁業への影響等が懸念され、その海洋汚染対策が、ここ数年、喫緊の国際的課題として注目されている。
ダボス会議で知られる「世界経済フォーラム」発表によれば、現在海へ流入している海洋プラごみは、アジア諸国由来のものが、全体の8割超を占めるとされ、発生国のベスト3は、中国・インドネシア・フィリピン等、日本の近隣のアジア諸国である。
世界のプラスチックの年間生産量は、過去50年で20倍に増大し、今後も、3億1,100万トン(2014年)から2050年には11億2,400万トンと約4倍に増大する見込みで、その時点で“海洋プラごみの量が海にいる魚を上回る”というショッキングな予測が発表されている。これらを受け、世界各国でファストフードやスーパーの樹脂製ストロー、レジ袋の提供禁止等、使い捨てプラスチック対策が急拡大している。
日本でも2020年7月から経産省と環境省は、容器包装リサイクル法の省令改正により、原則、すべての小売店でのレジ袋の有料化を義務化する法律が施行された。
レジ袋有料化から見える消費者意識、日本のプラごみの現状、削減のために私たちが取り組むべき課題について考察した、「オレンジページくらし予報」という女性誌アンケート調査(※)では、今まで無料だったものが有料になったにもかかわらず、「レジ袋の有料化」に約8割が賛成と回答し、その理由のトップ「プラスチックごみの削減につながる」が約7割に上っている。 (※) https://www.atpress.ne.jp/news/227120 : 調査対象は、国内在住の20歳以上の女性約1.700名。
一方で、プラごみ問題の現状への正しい理解はまだまだ進んでいない。例えば、日本が廃棄しているプラごみの量が1人当たり年間32kgで、世界ワースト2位(出所:国連環境計画(UNEP)2018年報告書)であるが、この事実を知っている人は約2割、海洋汚染を引き起こす「マイクロプラスチック」という言葉の意味まで知っている人は約3割と、世界的な問題として注目されているわりに少なく感じられる。一方で、今回の有料化をきっかけに「プラごみ問題への関心が高まった」は9割超と大変高く、問題解決に向けた前向きな姿勢が感じられる。
環境に負荷をかけた、持続可能とはいえない経済発展が続く限り、海洋プラスチック問題も、今後さらに拡大するだろう。日本は、1人当たりの容器包装等プラスチック発生量が世界第2位、プラスチック生産国としては世界第3位であることを国民1人1人が自覚し、海洋プラスチックごみ問題への責任ある対策が求められる。
世界的にコロナ禍の収束が見通せない中、レジ袋有料化による削減が始まった一方で、飲食店からのテイクアウトの増加など、プラスチック容器削減が難しい状況が続く。
海洋プラごみ問題に関連したSDGsとしては、14番目の目標「海の豊かさを守ろう」が挙げられるが、2019年6月、大阪市で開催されたG20サミットでも、2050年までに新たな海洋プラスチックごみによる汚染をゼロにする目標を掲げた「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を世界各国の首脳が共有している。行政や企業だけでなく、私たち消費者が三位一体となって知恵を出し合い、今こそ問題の深刻さを意識し、日常生活を見直し、解決に取り組むときではないだろうか。
(じゃこネット理事 大西 慧子)
私たちの日常生活に溢れるプラスチック─軽い・強い・価格も安い、さらに成形しやすく透明、とまさに何拍子も揃った、非常に便利な素材として、製品そのもの以外に、ビニールや発泡スチロール等の包装や梱包・緩衝材等にも幅広く使われている(注;家庭ごみの容積比6割超が容器包装、うち約5割がプラスチックごみ;2018年度)。
プラスチックの多くは、ごみとして“使い捨て”され、利用後、きちんと処理されず、環境中に流出してしまうことも多い。手軽に使える分、手軽に捨てられてしまう。環境中に流出したプラスチックごみが、河川を経由して、最終的に行きつく場所が「海」である。
海洋中の5ミリ以下の微細なプラスチックごみ(以下、プラごみ)は「マイクロプラスチック」と呼ばれ、すでに世界の海にプラごみは、合計で1億5,000万トン存在するといわれ、さらに少なくとも毎年800万トン(重量ではジャンボジェット機5万機相当!)ずつ、新たに流入しているという。それらは、生態系等や居住環境に及ぼす影響、船舶航行への障害、観光・漁業への影響等が懸念され、その海洋汚染対策が、ここ数年、喫緊の国際的課題として注目されている。
ダボス会議で知られる「世界経済フォーラム」発表によれば、現在海へ流入している海洋プラごみは、アジア諸国由来のものが、全体の8割超を占めるとされ、発生国のベスト3は、中国・インドネシア・フィリピン等、日本の近隣のアジア諸国である。
世界のプラスチックの年間生産量は、過去50年で20倍に増大し、今後も、3億1,100万トン(2014年)から2050年には11億2,400万トンと約4倍に増大する見込みで、その時点で“海洋プラごみの量が海にいる魚を上回る”というショッキングな予測が発表されている。これらを受け、世界各国でファストフードやスーパーの樹脂製ストロー、レジ袋の提供禁止等、使い捨てプラスチック対策が急拡大している。
日本でも2020年7月から経産省と環境省は、容器包装リサイクル法の省令改正により、原則、すべての小売店でのレジ袋の有料化を義務化する法律が施行された。
レジ袋有料化から見える消費者意識、日本のプラごみの現状、削減のために私たちが取り組むべき課題について考察した、「オレンジページくらし予報」という女性誌アンケート調査(※)では、今まで無料だったものが有料になったにもかかわらず、「レジ袋の有料化」に約8割が賛成と回答し、その理由のトップ「プラスチックごみの削減につながる」が約7割に上っている。 (※) https://www.atpress.ne.jp/news/227120 : 調査対象は、国内在住の20歳以上の女性約1.700名。
一方で、プラごみ問題の現状への正しい理解はまだまだ進んでいない。例えば、日本が廃棄しているプラごみの量が1人当たり年間32kgで、世界ワースト2位(出所:国連環境計画(UNEP)2018年報告書)であるが、この事実を知っている人は約2割、海洋汚染を引き起こす「マイクロプラスチック」という言葉の意味まで知っている人は約3割と、世界的な問題として注目されているわりに少なく感じられる。一方で、今回の有料化をきっかけに「プラごみ問題への関心が高まった」は9割超と大変高く、問題解決に向けた前向きな姿勢が感じられる。
環境に負荷をかけた、持続可能とはいえない経済発展が続く限り、海洋プラスチック問題も、今後さらに拡大するだろう。日本は、1人当たりの容器包装等プラスチック発生量が世界第2位、プラスチック生産国としては世界第3位であることを国民1人1人が自覚し、海洋プラスチックごみ問題への責任ある対策が求められる。
世界的にコロナ禍の収束が見通せない中、レジ袋有料化による削減が始まった一方で、飲食店からのテイクアウトの増加など、プラスチック容器削減が難しい状況が続く。
海洋プラごみ問題に関連したSDGsとしては、14番目の目標「海の豊かさを守ろう」が挙げられるが、2019年6月、大阪市で開催されたG20サミットでも、2050年までに新たな海洋プラスチックごみによる汚染をゼロにする目標を掲げた「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を世界各国の首脳が共有している。行政や企業だけでなく、私たち消費者が三位一体となって知恵を出し合い、今こそ問題の深刻さを意識し、日常生活を見直し、解決に取り組むときではないだろうか。
(じゃこネット理事 大西 慧子)