Consumers International (CI = 国際消費者機構)情報
「世界消費者保護週間」の認定について
(2017.8.14搭載)
国連は、1985年には国連消費者保護ガイドライン(以下、「消費者保護ガイドライン」)を制定した。同ガイドラインがグローバル化による諸問題に取り組む国連が作成した重要な国際的消費者保護指針となっている。その後、1997年に持続可能な消費に関する規定が新設された。さらに、2015年に金融サービス、Eコマースに関する規定の追加をはじめ全面的な改定が行われた。これまでの改定の実現にはCIが重要な役割を果たしてきた。
消費者保護ガイドラインは、制定当初からCI(Consumers International;国際消費者機構)の加盟団体(現在、200団体超)に重要視されている。中でも、消費者保護の法整備が不十分な国の消費者団体から消費者保護ガイドラインが自国の消費者保護強化を推進する期待がある。2015年の改定時に、改定後の実施について様々な議論があり、CIでは、実施状況の支援およびモニタリングができる国連内の常設委員会の設置を要請した。CIの活動の結果として、2016年に国連の担当部署を務める国連貿易開発会議(以下「UNCTAD」)の中に、国家間専門家グループ (Intergovernmental Group of Experts、以下「専門家グループ」)の常設委員会が設置され、初会合は、2016年10月17〜18日にジュネーブ市(スイス)で行われた。
他方、国際的な消費者関連テーマとして重要視されてきているのは、デジタル時代における消費者の権利や消費者保護である。2017の消費者権利の日(テーマは「消費者が信頼できるデジタル世界の構築」)に合わせて、ドイツの消費者保護担当の省庁とドイツの消費者団体、CIの共催で、2017年3月14〜15日に初めての「消費者サミット」がベルリン市(ドイツ)で開催された。その後、4月6〜7日にドイツのデュッセルドルフ市(ドイツ)で開催された「G20デジタル会合」で発表された宣言(G20 Digital Economy Ministerial Declaration)で、デジタル世界における信頼を構築するために消費者保護が重要であることに合意した。このように、様々な消費者関連のテーマについて、越境型の国際政策が必要であると認識されつつである。
このよう流れの中で、CIでは、国際的消費者政策のフレームワークを提示する消費者保護ガイドラインの実施を推進するために、30年以上前のCIの呼びかけで始まった「世界消費者権利の日 」の国際ディーの認定を要請するキャンペーンを展開してきた。上記の専門家グループの初会合で、CIから提案があって、多くの国から支持されたが、特に「権利」という文言を含むネーミングに対して否定的な意見もあったそうである。その結果、この会合で継続協議の課題になった。そこで、CIはさらに協議を重ねた結果、第1希望の国際デー化を残しながらも、複数の代替案を用意した。そして、2017年7月3〜4日に開催された専門家グループの第2回会合で、CIが提示した複数案をもとに協議がなされ、「国際消費者保護週間」という最終案に対して合意された。
次の段階で、UNCTADから今年の後半に開催される国連総会に対して「消費者保護週間」の認定を正式に提案する運びとなった。国連総会の承認を得られた場合、来年にも国際消費者保護週間が始まるであろう。
日本でもよく知られようになった「世界消費者権利の日(3月15日)」は、CI (Consumers International)の呼びかけで、30年以上前に始まり、ケネディ大統領が4つの消費者の権利を特別教書という形で提唱した記念日である。毎年CI加盟団体では、世界消費者権利の日にCIが設定したその年のテーマにちなんだ活動に取り組む。
** 上記の情報は、消費者法ニュース発行会議が主催した「第10回消費者問題リレー報告会法in大阪」の報告のために作成された資料です。
担当:当法人の理事長 タン・ミッシェル
2017年世界消費者権利の日〜 デジタル世界における消費者の権利
(2017.8.1搭載)
CI (Consumers International)の呼びかけで、毎年3月15日は「世界消費者権利の日」と認識されている。なぜ3月15日かというと、1962年のこの日に、ジョン・F・ケネディ大統領(当時)が、米国議会に送った「消費者の権利保護に関する大統領特別教書」(Special Message to the Congress on Protecting the Consumer Interest, March 15, 1962)で、「消費者の4つの権利」を提唱したからである。これを機に、アメリカをはじめ世界中で、消費者運動や消費者政策が展開され、記念すべき日となっている。
「世界消費者権利の日」がスタートしてから、すでに30年以上経った。CIは、毎年、共通のテーマを設定し、CI加盟団体は、3月15日前後に、そのテーマに沿った活動を行う。なお、CI加盟団体だけでなく、世界の非加盟消費者団体や消費者行政機関も、この日をきっかけに「消費者の権利」について考える機会にしている。
CIが設定した近年のテーマは、食用動物への抗生物質の過剰投与、健全な食生活、通信機器関連の問題など、国をまたぐ「国際消費者問題」を取り上げています。2017年の「世界消費者権利の日」のテーマは、「消費者が信頼できるデジタル世界を築こう」である。今年のテーマは、これまでの中でも最もデジタル世界における消費者の信頼構築が重要視されているが、それには下記の事情がある。
CIが引用する報告書によると、2020年までに世界人口の約52%はインターネットを利用できるようになると推測されている。これは、わずか5年間でインターネット利用者数が約30%も増加したことになるという[1]。
インターネットをはじめ、スマートフォンなどのデジタル技術は、より良いコミュニケーション方法、情報へのアクセス、より広い選択肢、便宜の提供といった利益を世界の消費者に与えている反面、解決が急務となっているような課題もある。
すなわち、日々進歩するテクノロジーにより、多くの情報にアクセスできるようになり、世の中はとても便利になっているが、一方、このサービスの質をどう改善していくか、消費者はどのオンライン・サービスなら信頼できるのか、オンライン上で共有しているデータはどのように使われるのか、デジタル製品に関連する消費者の権利とは何かなどの課題はたくさんある。
なお、2015年のCI加盟団体への調査によると、多くの国で、ネットに関する法規制がデジタル時代の変化のスピードに対応できていないことがわかった。CIでは、テクノロジーの利用が急増している消費者の権利の確立・保護がますます重要なテーマとなっている現状に注目し、2017年の「世界消費者権利の日」のテーマを「消費者が信頼できるデジタル世界を築こう」とした次第である。また、今後のCIの活動の中で、一層主要な活動領域の一つとなるであろう。
その第一歩として、CIは本年4月6日〜7日にドイツで開催されたデジタル関係のG20サミット(議長国はドイツ)に先立ち、2017年「世界消費者権利の日」に合わせて、ドイツの消費者団体(VZBV)と共催し、第1回「G20消費者サミット」を開催した。このサミットで、消費者が信頼できるデジタル世界について、G20各国の代表が検討した結果、オンライン取引における消費者の権利、デジタル製品・サービスに関する情報開示、詐欺・濫用からの保護、救済などを含む10の推奨事由(recommendation)が合意された。この合意に基づき、今後、国際的な枠組み作りに関する検討が始まる。
この動きを発展させるために、CIでは、デジタル時代における消費者の権利などを新設した、2015年改定の国際消費者保護ガイドラインの普及を最重要課題としている。そして、同ガイドラインの普及のために、毎年3月15日を国連において正式な「国際消費者権利デー」の設定を目指している。
[1] Cisco Visual Networking Index Global IP Traffic Forecast, 2015-2020.
**上記の情報は、消費者法ニュース112号に掲載されたものです。執筆者は、当法人の理事長 タン・ミッシェルです。
(2017.8.1搭載)
CI (Consumers International)の呼びかけで、毎年3月15日は「世界消費者権利の日」と認識されている。なぜ3月15日かというと、1962年のこの日に、ジョン・F・ケネディ大統領(当時)が、米国議会に送った「消費者の権利保護に関する大統領特別教書」(Special Message to the Congress on Protecting the Consumer Interest, March 15, 1962)で、「消費者の4つの権利」を提唱したからである。これを機に、アメリカをはじめ世界中で、消費者運動や消費者政策が展開され、記念すべき日となっている。
「世界消費者権利の日」がスタートしてから、すでに30年以上経った。CIは、毎年、共通のテーマを設定し、CI加盟団体は、3月15日前後に、そのテーマに沿った活動を行う。なお、CI加盟団体だけでなく、世界の非加盟消費者団体や消費者行政機関も、この日をきっかけに「消費者の権利」について考える機会にしている。
CIが設定した近年のテーマは、食用動物への抗生物質の過剰投与、健全な食生活、通信機器関連の問題など、国をまたぐ「国際消費者問題」を取り上げています。2017年の「世界消費者権利の日」のテーマは、「消費者が信頼できるデジタル世界を築こう」である。今年のテーマは、これまでの中でも最もデジタル世界における消費者の信頼構築が重要視されているが、それには下記の事情がある。
CIが引用する報告書によると、2020年までに世界人口の約52%はインターネットを利用できるようになると推測されている。これは、わずか5年間でインターネット利用者数が約30%も増加したことになるという[1]。
インターネットをはじめ、スマートフォンなどのデジタル技術は、より良いコミュニケーション方法、情報へのアクセス、より広い選択肢、便宜の提供といった利益を世界の消費者に与えている反面、解決が急務となっているような課題もある。
すなわち、日々進歩するテクノロジーにより、多くの情報にアクセスできるようになり、世の中はとても便利になっているが、一方、このサービスの質をどう改善していくか、消費者はどのオンライン・サービスなら信頼できるのか、オンライン上で共有しているデータはどのように使われるのか、デジタル製品に関連する消費者の権利とは何かなどの課題はたくさんある。
なお、2015年のCI加盟団体への調査によると、多くの国で、ネットに関する法規制がデジタル時代の変化のスピードに対応できていないことがわかった。CIでは、テクノロジーの利用が急増している消費者の権利の確立・保護がますます重要なテーマとなっている現状に注目し、2017年の「世界消費者権利の日」のテーマを「消費者が信頼できるデジタル世界を築こう」とした次第である。また、今後のCIの活動の中で、一層主要な活動領域の一つとなるであろう。
その第一歩として、CIは本年4月6日〜7日にドイツで開催されたデジタル関係のG20サミット(議長国はドイツ)に先立ち、2017年「世界消費者権利の日」に合わせて、ドイツの消費者団体(VZBV)と共催し、第1回「G20消費者サミット」を開催した。このサミットで、消費者が信頼できるデジタル世界について、G20各国の代表が検討した結果、オンライン取引における消費者の権利、デジタル製品・サービスに関する情報開示、詐欺・濫用からの保護、救済などを含む10の推奨事由(recommendation)が合意された。この合意に基づき、今後、国際的な枠組み作りに関する検討が始まる。
この動きを発展させるために、CIでは、デジタル時代における消費者の権利などを新設した、2015年改定の国際消費者保護ガイドラインの普及を最重要課題としている。そして、同ガイドラインの普及のために、毎年3月15日を国連において正式な「国際消費者権利デー」の設定を目指している。
[1] Cisco Visual Networking Index Global IP Traffic Forecast, 2015-2020.
**上記の情報は、消費者法ニュース112号に掲載されたものです。執筆者は、当法人の理事長 タン・ミッシェルです。
2017年度「世界消費者権利の日《WCRD*》」のテーマ決定 〜 「消費者が信頼できるデジタル世界を築こう」
(2016.11.1搭載)
1995年わずか1%だったネット利用者は、今や世界人口の40%、30億人以上。そして、この数字は今後も上がり続けると予想されています。ネットを利用できずにいる消費者もまだ、まだ多いのですが、ネット、携帯電話、その他のテクノロジーの急速な発達は多くの消費者に、プラス面と、解決すべき課題の両方をもたらしています。これらのテクノロジーにより、多くの情報にアクセスできるようになり、とても便利になったことは疑う余地がないプラス面です。
一方、このサービスの質をどう改善していくか、消費者はどのオンライン・サービスなら信頼出来るのか、オンライン上で共有しているデータはどのように使われるのか、デジタル製品に関連する消費者の権利とは何かという点については、これから検討し、解決すべき課題となっています。
変化するスピードへの対応も、解決すべき課題です。電話は、利用者が5000万人になるまで、75年かかりました。フェイスブックは?・・・1年です。インスタグラムは?・・・6ヵ月です。
2015年CIの調査によると、多くの国で、ネットに係わる法規制がこの変化のスピードに対応出来ていませんでした。
CIは、WCRD 2017年の活動として、G20の公式議題になると予想される「消費者サミット」を共催します。G20の2017年の議長国はドイツなのですが、このイベントは、CIのドイツのメンバーであるVZBVと共催され、CIの2017年のWCRD活動に対する大きな貢献となるはずです。
参照:http://www.consumersinternational.org/our-work/wcrd/wcrd-2017/
* 毎年3月15日(WCRD:World Consumer Rights Day)。これは、1962年、米国大統領、ジョンFケネディによって消費者の権利が提唱された日にちなみます。
** VZBVとは、ドイツの消費者団体連盟(Verbraucherzentrale Bundesverband)の略称である。
メニューまら抗生物質を除くためのキャンペーン
(2016.10.20搭載)
CI では、抗生物質規制など、食分野の課題には重点的に取り組んでいる。今年度は特に、外食、そのうちファストフード・チェーンのメニューから抗生物質を除くためのキャンペーンが展開されているので、ご紹介したい。
詳細は、CIのHP(http://www.consumersinternational.org/ )を参照。
※以下、CI のサイト情報の和訳
抗生物質への耐性は、新薬の開発以上の速度で広がっている。もし世界全体で抗生物質の消費量を削減するための緊急対策が取られないと、単純な感染が死を招く時代に逆行する可能性がある。日常的な家畜への抗生物質の広範囲な投与が、感染症による死の脅威を拡大している。
世界で生産される抗生物質の約半分は農業に使用されている。その多くは、病気の防止ではなく、家畜等の成長を促進するために使用される。CIとそのメンバーは、世界中のすべての家畜のサプライチェーン全体で、人間の医療のために重要な、抗生物質の日常的使用に終止符を打つ、期限付きのコミットメントを得るために、 マクドナルド、KFCやサブウエイを含め、多国籍レストランチェーン に呼びかけている。
私たちの報告書「メニューから抗生物質をなくそう!」では、これら 3つの世界的なファーストフード企業は現在、世界的な抗生物質の耐性菌による健康リスクへの対応が不十分であることがわかった。 [省略]
2016年9月世界中のリーダーが参加する、ニューヨークでの国連総会ハイレベル会合で、この公衆の健康の危機について議論される。世界全体が、抗生物質の耐性菌に立ち向かうために行 動しなければならないことを、マクドナルド、KFCやサブウエイに 伝えるために、この会合を利用するべきだ。
・すべての食肉のサプライチェーンにおいて、人間の医療に重要である抗生物質の日常的使用を段階的になくす、世界的で期限を定めた行動計画を策定する。
・その抗生物質の使用方針に関する第三者の監査を採用し、その結果を公開することにより、進捗状況を公表する。
抗生物質の耐性菌に対する対策がとられなければ、結核や肺炎のように、抗生物質に依存して治療している、ありふれた病気や感染症に今後、立ち向かえない危険性がある。世界的なブランドである、これら多国籍ファストフードチェーンが世界的に、法規制による変化よりも早く、業界のための自主基準を設定し、抗生物質の農業利用の減少を進める、責任ある立場にある。
その他のCI関連トピックス
・世界消費者権利の日
・国連消費者保護ガイドライン(建設中)