JIS (Japan Industrial Standard)についての基礎知識 |
規格の種類
規格には、いろいろな種類があります。業界規格は産業界の中で決めている規格です。JISは国が決めた日本の国家規格です。正確には、それぞれの物を所管する大臣が制定する規格です。国際標準化機関が決めるのが国際規格です。それぞれの規格ではいろいろなことが決められています。ここではJISを例にとって話をします。
JISには基本規格、方法規格、製品規格の3種類の規格があります。 基本規格は、用語の定義などを決めています。産業界や企業によって同じ物でも呼び方が違う場合は、規格を見る人によって違う解釈をして混乱することになりますから、それを避けるためにもこのような定義が必要なのです。このような規格が2000規格あります。 方法規格は、測定方法、分析方法などを決めています。規格ではいろいろな数値を決めていますが、測定方法が違えばどんな数字でも意味を持たなくなります。ですから数値を決める前にどのような測定方法で測定するかを決めておかなければなりません。このような規格は3000規格あります。 製品規格は、それぞれの製品がどのようなものかを決めている規格です。蛍光灯や鉛筆といったそれぞれの製品の特質、機能、表示の仕方が決められています。このような規格は4000規格あります。この中には材料などの中間製品の規格も含まれますので、実際に私たちが目にする最終製品規格は2200規格です。 この他に、JISや国際規格にはマネージメント・システム規格という新しい規格があります。良く知られているのはISO9000、ISO14000という規格です。これは企業などの経営の仕方を良くするために認証という仕組みを組み込んだ規格です。 JISはどうやって作られるか
JISを作る方法としては、政府が委員会を組織して、そこの委員会でJISのもとになる案を作り、それを大臣に提出します。大臣は日本工業標準調査 会(JISC)に諮問して(付議すると法律ではいいます)、調査会が審議した結果、案が問題ないようであればその結果を大臣に答申して、大臣がJISを定 めます。
つまり案は政府の委員会で作られることになります。この委員会には、製造者だけではなく、消費者などJISで定められた製品を使うユーザー、そして 中立的な学識経験者などの三者が集まって決めることになっています。家電製品や消費財のように私たちが直接的に生活で使うものを定めたJISでは、消費者 の代表が委員会に参加しています。 もう一つの方法としては、産業界で主に使われる製品や測定方法などについて産業界が案を作ってJISにしてもらう方法があります。これは学会や工業 会の中に委員会を作って規格案を作り、関係する大臣に提出してJISを策定してもらう方法です。このような委員会でも製造者と利用者、中立的な人の三者が 委員会に参加して合意をしてもらうことが求められます。 このように産業界が主に使うものの規格であっても、使う材料などによっては消費者に影響を与えるものもありますので、直接的に消費者が利用する製品の規格ではないものでも消費者が委員会に参加しておくことが大事です。 最近では学会や産業界が自主的に作って大臣に提出する規格が増えてきています。政府が直接委員会を組織するのは、社会ニーズはあるけれども産業界な どが自主的には作ってこないものを対象としています。例えば、高齢者を配慮した製品の規格などです。環境関連では環境ホルモンなどを測定する方法規格など も政府が案を作っています。 JISはどこで審議されているのか
JISは日本の標準化団体である日本工業標準調査会(JISC)で審議されています。この日本工業標準調査会が、ISO/IECに登録された日本の標準化団体です。JISCには、JISを審議するために標準部会が設置されていて、実際にはその下にある27の専門委員会で審議しています。委員の中には消費者団体の代表者も入っています。
JISの案は、大臣に提出されてからJISC事務局で審査をして体裁や国際規格との整合性をチェックされたあと、専門委員会にかけられて審議されます。ここでの意見をもとに必要な手直しが終わるとパブリックコメントにかけられて、その後正式に官報に載ります。JISができるまでの期間は、大臣にJISの案が提出されてから官報に載るまで約1年程度といわれています。この期間を短縮するためにJISCでは電子化による作業効率化を進めてきていて、現在のところ半年程度まで短縮することができているようです。 ではどのようなJISを作っていくのかついて、方向性はあるのでしょうか。JISCでは2001年8月に標準化戦略を発表しています。これは総論編と各専門委員会毎の戦略があり、後者にはこれからどのようなJISを作っていくべきかを記述しています。学会や工業会では、これをもとにJISの案を作成するようにしています。この内容はJISCのホームページでみることができます。 JISCでは、この戦略に載っている規格から優先的にJISにすると発表しておりますので、これからどのような規格ができてくるのか、関心のある人はJISCのホームページで該当するところを見てみましょう。 JISの機能はどのようなものか 〜時代とともに変わるJISへのニーズ
いろいろな規格はそれ自体でいろいろな機能を果たすことができます。産業界で作っている規格では、それぞれの異なる企業の作る部品がしっかりと繋がるように結合部分の物理的、電気的な仕様が同じになるようにしています。
それぞれの部品の品質についても規格で決めています。そうしないとほとんどの部品の品質が良くても、他の部品の品質が悪ければ組み立てた製品の品質は一番悪い部品の品質で決まってしまうからです。粗悪な部品を排除しながら、同時に過剰品質もなくすことで安価な製品を市場に出すことができるのです。 それでは日本の国家規格であるJISは、どのような機能を持っているのでしょうか。JISの機能として最初に挙げられるのは適正な品質と生産効率の 向上です。基準を明確にすることで工場での生産工程が簡素化され、品質の改善も容易になります。これによって消費者に提供される製品の品質も向上してきま した。 この他にも、規格を作ることで多くの企業が市場に参加しやすくなり競争が促進されることで廉価な商品が提供されるようになること、規格が技術の基盤 となることで技術の普及を図るという機能もあります。もちろん互換性の確保ということも重要な機能です。電池などがメーカの製品に依らずに使えるのは互換 性によるものです。 最近では社会目標を達成するための基準としてJISを使おうとする動きもあります。例えばリサイクルを進めるために、リサイクル製品の安全基準をJISで作ろうとしています。 また、国際規格との整合性を持たせることで貿易を促進させる機能もあると言われています。 誰もJIS案を作らないときにはどうするのか
JISを作るのには、政府が委員会を組織してそこで案を作る場合と、学会や工業会が自ら案を作って関係の大臣に提出する場合の二通りがあります。特に後者は組織を限定されていませんので、極端に言えば個人で作っても良いことになっています。
JISの案を作る際に、どのようなことを配慮したらいいのでしょうか。JISは読む人によって解釈が違っては規格の意味がありませんから、文書とし ての体裁や言葉使いが大きな意味を持ちます。既存のJISなどとの重複や齟齬があってもいけないことになっています。また、国際的な配慮も必要です。 WTO(世界貿易機構)の取り決めで、それぞれの国の規格は国際規格に合うようにすることが決められています。 大変ハードルが高いように思えますが、しっかりと調査をして対応すればJIS案を作成することは可能です。また、自分たちで作らなくても、どのような規格を作ってほしいかを政府に要望して、政府自らが組織する委員会で作らせる方法もあります。 まずは調査から開始します。現在どのようなJISがあるかを調べるには、日本工業標準調査会(JISC)のホームページに全てのJIS規格が公表さ れています。(印刷はできません)ここで関係しそうな規格を調べてみましょう。分類方法などに慣れるまでは、うまく必要な情報を取るのは難しいかもしれま せんが、必ず見つけることができます。 JISCのホームページにはこれまで受けた質問の内で頻繁にある質問を取り上げ、回答しているページがあります。このような情報も有益です。また、意見を提出する仕組みもあります。このような方法を駆使することで、必要な規格を整備することが可能です。 大臣が制定するJIS 〜国家規格とはどういうことなのか
JISは、誰が制定しているのか。国家規格であることは知っていても誰が制定しているかを知っている人は少ないのではないでしょうか。JISを制定しているのは、それぞれの製品に関連の深い大臣が制定することになっています。
例えば、家庭電化製品や生活で使う消費財などは経済産業大臣ですが、医療で使う高度な機械などは厚生労働大臣が制定しています。船舶や鉄道という点では、国土交通大臣が制定しています。 このようにJISに関係してくる大臣だけでも、文部科学大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、経済産業大臣、農林水産大臣の5大臣がそれぞれの製品やそれに関連したJISを定めています。 それでは工業標準調査会(JISC)とそれぞれの大臣との関係はどのようなものなのでしょうか。各大臣はJISを制定する際には、JISCに対して 諮問をして意見を求めます。JISCでは、それに対して審議をしてJISを制定して良いかどうかを大臣に応えます。その意見により大臣はJISを制定して います。簡単にいえば、JISCは各大臣へのご意見番といえます。 それではJISに定められた製品に問題があった場合にはJISに責任を問うことができるのでしょうか。一般には、JISは製品の全ての機能を決めて いるものではないので製品に問題がある場合には、まずは製造者責任になる、といわれています。ただし、安全基準のようにJISが他の法律によらずに定めて いる数値が問題になったときには、JISにも責任があると考えられます。 法律に引用されるJIS 〜なぜ法律に使われるのか
JISは規制を伴う法律にも引用されています。通常、法律ではそれほど詳しいことは書いていませんが、法律の下にある政令、省令、告示といった中に技術基準などが決められています。最近の傾向としてこの技術基準の代わりにJISが使われるようになってきています。
法律で決められている技術基準は強制力を持っています。それは当然輸入品にも及びます。もし、各国の法律で決められている技術基準がバラバラだった としたら貿易はどのようになるでしょうか。A国に輸出する製品とB国に輸出する製品との安全基準などをそれぞれの国の基準に合わせて作るのはコストが高く なりすぎます。つまりバラバラの技術基準では貿易を阻害することになります。 1995年に設立されたWTO(世界貿易機構)は、そのようなことがないように各国の規格を国際規格に合わせるための協定を実施しています。さらに 規制を伴う法律をできるだけ性能規定化、つまり求める性能だけを法律で定めて、技術的な数値は各国の規格を法律が引用するように求めています。つまり法律 では、漏電しないこと、と定めて、規格では配線の間は3mmにすること、と決めると、法律で3mmと規制しているのと同じになります。 この場合、3mmというのは国際規格に合わせて決めているので、どこの国でも同じ数値で規制されることになり、貿易での障害にならないことになります。 日本もWTOの協定に入っていますのでJISがいろいろな法律に引用されているのです。貿易が盛んになると国産の製品だけでなくいろいろな輸入品からも消費者が選択できるので消費者の利益につながります。 国際規格とJISとの関係 〜JISは勝手に作ることはできるの
国際規格とJISは密接な関係があります。これは1995年にWTO(世界貿易機構)が設立され、そこでTBT協定
(技術による貿易障害をなくすための協定)が調印されています。これは各国で作られているJISのような基準がバラバラだと、貿易の際にその基準が障壁と なってしまうので、そのようなことがないようにしようとする各国間の約束事です。日本も協定に入っていますので、国際約束を守らなければなりません。 TBT協定では、国際規格がある場合には各国の国家規格は特段の問題がない限り国際規格に準じて作ることが決められて います。特別な場合というのは、気候や慣習、人種による体格の違いなどです。日本では平成7年から3年間をかけてそれまでのJISの見直しをして、国際規 格に合わせました。 また、WTOでは政府や政府が株式の大半を持っている企業が調達をする際には、国際規格をもとに調達することを義務付 けています。もし、これを怠るとWTO違反として訴えられることが予想されます。JISなどの規格は任意規格と呼ばれ、規格に合わせるかどうかは製造業者 が決めることができる柔軟な仕組みですが、政府調達のような場合には国際的な整合性を取るという目的のために、任意規格が強制的に使われることがありま す。 国際規格がある場合でも、気候や慣習、人体的差異に依るところは一部変更して良いことになっています。しかし、これは 例外的な措置です。国際規格は伝統的にヨーロッパが力を持って制定している規格です。発言しなければ日本の独特な変更はわかってくれません。これからは日 本から新しい提案をしてゆくことで、このような上便さをなくしていく必要があります。 デファクト標準とデジュール標準はどう違う
デファクト標準は、市場で競争が行われて、最終的に勝利した製品が結果として標準の地位を占めた規格のことです。例えば、パソコンのWINDOWSやビデオデッキのVHSなどがデファクト標準の典型といわれています。
このように市場に商品が出回ってから競争が起きて標準が決まっていくモデルは、現在では古典的モデルといわれています。このようなデファクト標準が 決まる場合には、マイクロソフト社のようにある一社が独占状態でいる市場の場合は例外的です。一般には、複数の企業がグループを作り、それぞれのグループ が競争するして優劣を決めていきます。 一旦市場に製品が投入されてから勝負が決まる方法は、企業にとって既に設備投資を終えていますので、大きな負担になります。消費者にとっても、折角 購入した商品がしばらくすると違う仕様のものしかでないのでは困ります。ビデオのベータ方式を購入した人が、次に購入しようとしたときには市場にはVHF 方式しか出回っておらず、それまでの取りためたカセットが全く使えなくなってしまうのでは、消費者は上便を強いられることになります。 一方の、デジュール標準は、一定の手続きを踏んで作られた規格のことです。ISO、IECなどで作られている規格は、多くの国から専門家が集まって 会議をしながら作られ、最後には各国の標準化機関が投票して決めています。日本の標準であるJISも日本工業標準調査会の審議を経て、関係大臣が制定する という手続きを踏んで作られます。 デジュール標準は、透明性のある民主的な手続きを踏んで作られ、それをもとに企業が製品を市場に投入しますので、企業や消費者が過度な負担を強いら れることもありません。しかし、標準を作るのに長い時間がかかります。IT関連製品のように製品サイクルが短いものには向きません。 そこで最近では、デファクト標準とデジュール標準の良いところを取ったフォーラム規格と呼ばれる規格がでてきました。有力な企業が集まって、市場に商品が登場する前に規格を作り、それに合った製品を市場に投入することで企業も消費者もリスクを負わなくても良くなります。 JISを見るにはどうしたらいいのか
JISを見るには、大きく分けますと二通りの方法があります。一つがインターネットから見る方法で日本工業標準調査会(JISC)のホームページから見ることができます。この場合は、規格を見るだけでダウンロードや印刷はできませんので注意してください。
二つ目の方法は、印刷物として見る方法があります。全ての規格は、北海道から沖縄まで各ブロックごとにある経済産業局または財団法人日本規格協会で見ることができます。なお購入する場合は、大手書店または財団法人日本規格協会で売っております。 それではJISCのホームページで「ながぐつ《のJISを見てみましょう。まずここをクリックしてJISCのホームページにいってみましょう。もう一つホームページが立ち上がりますから、この説明と一緒に見ていきましょう。 http://www.jisc.go.jp/jis-act/reading.html 次にJIS検索をクリックします。そうすると検索する窓が開いているところに行きます。一番下の単語検索のところのキーワードに「長靴《と入れてみましょう。漢字で入れることができます。そうすると19件のJIS規格が検索されます。 この中で長靴のJIS番号が青くなっていますので、そこに矢印を持っていってクリックします。そうするとJIS詳細表示というところの上に規格の閲 覧というところがでてきます。ここでS5005 01のところを再度クリックしましょう。注意書きがでてきますが、そこで「はい《をクリックするとJIS が表示されます。これが規格表です。 JISでは、品質、寸法、使用材料、試験方法などが決められています。 |