ODR研究会 オープン・セミナー
『UNCITRAL ODR原則と越境Eコマースの紛争解決』
1. 内容
2016年1月20日 オープン・セミナー 『UNCITRAL_ODR原則と越境Eコマースの紛争解決』
NPO法人消費者ネットジャパン(じゃこネット)では、2015年度の調査研究テーマの一つである「国境を超えるEコマースの苦情対応・紛争解決の在り方」に関する活動の一環として、一般社団法人ECネットワークの協力を得て、下記のとおり、オープン・セミナー『UNCITRAL_ODR原則と越境Eコマースの紛争解決』を開催いたします。
これまでの研究会では、越境Eコマースのトラブル解決を巡る現在の日本の状況について確認して参りました。(概要はこちらをご参照ください。)この後は、OECDやConsumers Internationalなど国際的議論の場における検討状況やEUの法制につき学んだ上で、日本における望ましい在り方を考えていく予定です。
この問題に直接的に関係する国際会議の一つが、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)Working Group III(Online Dispute Resolution)(ODR作業部会)です。同作業部会では、2010年からの議論の成果として、越境Eコマースを主に念頭においた「ODR手続きに求められる要素や原則」についての説明文書をまとめようとしています。
今回のオープン・セミナーでは、日本代表委員としてODR作業部会に当初より参加され、議論をリードされてきた立教大学法学部の早川吉尚教授を講師にお迎えし、説明文書(2015年12月時点のドラフト)の内容や、今後の公表見通し、各国・機関の動向などについて詳しくお話いただきます。
また、日本における最も先進的な取り組みとして、2009年に消費者庁により設置され、現在は国民生活センターが運営する越境消費者センター(CCJ)の実績と今後の課題につき、同センター松本理事長よりご紹介いただく予定です。
どなた様も無料でご参加いただけますので、参加ご希望の方は、末尾の申込みフォームより、奮ってお申し込みください。
記
日時:2016年1月 20日(水)18:00-20:00
会場:中央区月島区民館5号室(定員100名)
http://www.city.chuo.lg.jp/sisetugaido/syukaisisetu/syukaisisetu14.html
プログラム:
18:05-18:10 開会挨拶(じゃこネット理事長 タン・ミッシェル)
18:10-18:15 研究会中間報告
(じゃこネットECWG主査/ECネットワーク理事 沢田登志子)
18:15-18:40 『国民生活センター越境消費者センター(CCJ)の今後』
(独立行政法人国民生活センター理事長 松本恒雄様)
18:40-19:30 UNCITRAL_ODR
(立教大学法学部教授 早川吉尚様)
19:30-20:00 質疑応答
参加費:無料
申し込み:以下ページよりお願いします(EC ネットワークのサイトへ移動する)。
http://www.ecnetwork.jp/public/seminar.php
・ お申込みをいただきましたら、順次ECネットワークより参加承認メールをお送りいたします。
・ 同一組織から複数お申し込みの場合、人数の調整をお願いすることがございます。あらかじめご了承ください。
・ 会場の定員に達した時点で、締め切りとさせていただきます。
NPO法人消費者ネットジャパン(じゃこネット)では、2015年度の調査研究テーマの一つである「国境を超えるEコマースの苦情対応・紛争解決の在り方」に関する活動の一環として、一般社団法人ECネットワークの協力を得て、下記のとおり、オープン・セミナー『UNCITRAL_ODR原則と越境Eコマースの紛争解決』を開催いたします。
これまでの研究会では、越境Eコマースのトラブル解決を巡る現在の日本の状況について確認して参りました。(概要はこちらをご参照ください。)この後は、OECDやConsumers Internationalなど国際的議論の場における検討状況やEUの法制につき学んだ上で、日本における望ましい在り方を考えていく予定です。
この問題に直接的に関係する国際会議の一つが、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)Working Group III(Online Dispute Resolution)(ODR作業部会)です。同作業部会では、2010年からの議論の成果として、越境Eコマースを主に念頭においた「ODR手続きに求められる要素や原則」についての説明文書をまとめようとしています。
今回のオープン・セミナーでは、日本代表委員としてODR作業部会に当初より参加され、議論をリードされてきた立教大学法学部の早川吉尚教授を講師にお迎えし、説明文書(2015年12月時点のドラフト)の内容や、今後の公表見通し、各国・機関の動向などについて詳しくお話いただきます。
また、日本における最も先進的な取り組みとして、2009年に消費者庁により設置され、現在は国民生活センターが運営する越境消費者センター(CCJ)の実績と今後の課題につき、同センター松本理事長よりご紹介いただく予定です。
どなた様も無料でご参加いただけますので、参加ご希望の方は、末尾の申込みフォームより、奮ってお申し込みください。
記
日時:2016年1月 20日(水)18:00-20:00
会場:中央区月島区民館5号室(定員100名)
http://www.city.chuo.lg.jp/sisetugaido/syukaisisetu/syukaisisetu14.html
プログラム:
18:05-18:10 開会挨拶(じゃこネット理事長 タン・ミッシェル)
18:10-18:15 研究会中間報告
(じゃこネットECWG主査/ECネットワーク理事 沢田登志子)
18:15-18:40 『国民生活センター越境消費者センター(CCJ)の今後』
(独立行政法人国民生活センター理事長 松本恒雄様)
18:40-19:30 UNCITRAL_ODR
(立教大学法学部教授 早川吉尚様)
19:30-20:00 質疑応答
参加費:無料
申し込み:以下ページよりお願いします(EC ネットワークのサイトへ移動する)。
http://www.ecnetwork.jp/public/seminar.php
・ お申込みをいただきましたら、順次ECネットワークより参加承認メールをお送りいたします。
・ 同一組織から複数お申し込みの場合、人数の調整をお願いすることがございます。あらかじめご了承ください。
・ 会場の定員に達した時点で、締め切りとさせていただきます。
2. 開催報告
2016年1月20日(水)18:00〜20:00、中央区月島区民館5号室において、じゃこネットとECネットワークの共催によるセミナーを実施いたしました。一般参加を含む50名ほどの方にご参加いただきました。概要は以下の通りです。
じゃこネット理事長 タン・ミッシェルによる開会挨拶の後、沢田より、ODR研究会の趣旨とこれまでの活動等について簡単に報告いたしました。
その後、次の2つのテーマでご講演いただきました。
【国民生活センター越境消費者センター(CCJ)の実績と課題】
独立行政法人国民生活センター 松本恒雄理事長より、CCJ設立の背景から、相談処理の概要、実績、相談データや事例につきご紹介いただきました。CCJでは、啓発コンテンツなども積極的に公開されています。
今後の課題は、現在8機関にとどまる海外提携先を拡大し、日本の消費者から相談が多く寄せられる国・地域における連携を強化して、多国間のネットワークを構築すること、とのことです。
【UNCITRAL ODR作業部会の検討状況】
立教大学法学部の早川吉尚教授より、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)ODR作業部会において2010年から検討されているODRの国際統一ルールについて、背景や議論経過と現状、各国法制度との関係などを含め、ご紹介いただきました。
5年にわたり議論が二転三転した最大のポイントは、EUや日本の仲裁法が「事前合意で消費者を拘束する仲裁」を許容していないことに起因するようです。ODR原則に仲裁を含めようとする米国その他の主張と、消費者から裁判を受ける権利を奪う仲裁は国内法に違反するので受け入れられないとするEU側の主張が対立し、様々な打開策が提案されたものの、最終的には、統一ルールという形での実現は困難という結論に至りました。これには、2013年にEUがADR指令とODR規則を策定し、本件に関する判断権限もEUに集約されたことが大きく影響したようです。
そして、これまでの議論の成果は、交渉や調停で解決しなかった場合の「第三段階」(仲裁や裁定)には触れないという前提で、拘束力のない「ノート」という文書にまとめられることになりました。2016年3月初旬に開催される作業部会会合で最終案が確定し、年内に総会承認が得られる見込みです。統一ルールという位置づけではありませんが、公正性、透明性、簡易・迅速といった、ODRに求められる基本的な要素が網羅された「諸原則」として、様々に活用されることが期待されます。
2015年12月時点の「ノート」のドラフトはこちらでご覧になれます。
http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/LTD/V15/089/59/PDF/V1508959.pdf?OpenElement
【質疑応答】
以上2つのご講演を受けての質疑では、ODR国際統一ルール化の今後の見通し、各国政府・事業者のスタンス、日本における導入可能性等について質問が出されました。
早川教授によれば、欧州の代表者は、「国内法に抵触しないかどうか」が最大の関心事であったのに対し、米国は、「ODRが越境紛争の現実的な解決手段たり得るか」に重点を置いた議論を展開していたとのことです。過去の作業部会には、ODRを組み込んだサービスを提供するプラットフォーム事業者や、ODR自体をビジネスとする事業者が米国チームの応援団としてオブザーバ参加する場面も見られました。しかし消費者仲裁を巡る議論が紛糾するにつれ、事業者の関心と発言の場は、国連ではなく、ビジネスフォーラムでの情報交換や、より米国主導で議論を進められる(例えばAPECなどの)国際会議に移って行ったようです。今後も様々な場で議論が続いていくと予想されます。
日本では、ODR以前に、越境トラブルに関する消費者の苦情を受け止め、言語の問題をカバーする仕組みとして、CCJが先行して実現しました。抽象的なODRルールにとどまらず、日本の実情により合致したきめ細かい仕組みが必要となってくると思われます。ODRの場面でも言語の問題はついて回り、消費者一人一人がODRの当事者として役割を果たすにはサポートも必要となる、というのが松本理事長のご見解でした。
本セミナーでは、この後のじゃこネットODR研究会における検討への有益なご示唆をいただくことができました。次回2月の研究会では、OECD、CI等での最近の議論状況やEUの法制度、TPP協定について取り上げてみたいと考えております。
じゃこネット理事長 タン・ミッシェルによる開会挨拶の後、沢田より、ODR研究会の趣旨とこれまでの活動等について簡単に報告いたしました。
その後、次の2つのテーマでご講演いただきました。
【国民生活センター越境消費者センター(CCJ)の実績と課題】
独立行政法人国民生活センター 松本恒雄理事長より、CCJ設立の背景から、相談処理の概要、実績、相談データや事例につきご紹介いただきました。CCJでは、啓発コンテンツなども積極的に公開されています。
今後の課題は、現在8機関にとどまる海外提携先を拡大し、日本の消費者から相談が多く寄せられる国・地域における連携を強化して、多国間のネットワークを構築すること、とのことです。
【UNCITRAL ODR作業部会の検討状況】
立教大学法学部の早川吉尚教授より、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)ODR作業部会において2010年から検討されているODRの国際統一ルールについて、背景や議論経過と現状、各国法制度との関係などを含め、ご紹介いただきました。
5年にわたり議論が二転三転した最大のポイントは、EUや日本の仲裁法が「事前合意で消費者を拘束する仲裁」を許容していないことに起因するようです。ODR原則に仲裁を含めようとする米国その他の主張と、消費者から裁判を受ける権利を奪う仲裁は国内法に違反するので受け入れられないとするEU側の主張が対立し、様々な打開策が提案されたものの、最終的には、統一ルールという形での実現は困難という結論に至りました。これには、2013年にEUがADR指令とODR規則を策定し、本件に関する判断権限もEUに集約されたことが大きく影響したようです。
そして、これまでの議論の成果は、交渉や調停で解決しなかった場合の「第三段階」(仲裁や裁定)には触れないという前提で、拘束力のない「ノート」という文書にまとめられることになりました。2016年3月初旬に開催される作業部会会合で最終案が確定し、年内に総会承認が得られる見込みです。統一ルールという位置づけではありませんが、公正性、透明性、簡易・迅速といった、ODRに求められる基本的な要素が網羅された「諸原則」として、様々に活用されることが期待されます。
2015年12月時点の「ノート」のドラフトはこちらでご覧になれます。
http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/LTD/V15/089/59/PDF/V1508959.pdf?OpenElement
【質疑応答】
以上2つのご講演を受けての質疑では、ODR国際統一ルール化の今後の見通し、各国政府・事業者のスタンス、日本における導入可能性等について質問が出されました。
早川教授によれば、欧州の代表者は、「国内法に抵触しないかどうか」が最大の関心事であったのに対し、米国は、「ODRが越境紛争の現実的な解決手段たり得るか」に重点を置いた議論を展開していたとのことです。過去の作業部会には、ODRを組み込んだサービスを提供するプラットフォーム事業者や、ODR自体をビジネスとする事業者が米国チームの応援団としてオブザーバ参加する場面も見られました。しかし消費者仲裁を巡る議論が紛糾するにつれ、事業者の関心と発言の場は、国連ではなく、ビジネスフォーラムでの情報交換や、より米国主導で議論を進められる(例えばAPECなどの)国際会議に移って行ったようです。今後も様々な場で議論が続いていくと予想されます。
日本では、ODR以前に、越境トラブルに関する消費者の苦情を受け止め、言語の問題をカバーする仕組みとして、CCJが先行して実現しました。抽象的なODRルールにとどまらず、日本の実情により合致したきめ細かい仕組みが必要となってくると思われます。ODRの場面でも言語の問題はついて回り、消費者一人一人がODRの当事者として役割を果たすにはサポートも必要となる、というのが松本理事長のご見解でした。
本セミナーでは、この後のじゃこネットODR研究会における検討への有益なご示唆をいただくことができました。次回2月の研究会では、OECD、CI等での最近の議論状況やEUの法制度、TPP協定について取り上げてみたいと考えております。
- 研究会の概要はこちら