身近な消費財、衣料品の購買行動を見直し環境負荷を低減する、サーキュラーエコノミー(循環型経済)、エシカル消費の視点が不可欠。サステナブルファッションこそ、ファッショナブル!
突然ですが、あなたの部屋のタンスやクローゼットには何着ほどの衣料品がありますか?近年のファストファションの急拡大もあり、下着・インナーからコート類まで含めると、所有する衣料品の数を正確にわからない消費者が世界中に増え続けているのではないでしょうか。私自身、格安な衣料品をつい買ってしまい、後でよく似たものに気付き、罪悪感を覚えることも。そんな世界中の消費者の購買行動が蓄積して、地球環境を悪化させているとしたら??…ファッションに対する意識変革は、大量生産・大量消費・大量廃棄型社会システムで、欲望のままに過剰な消費を続けてきたライフスタイル見直しの最優先課題です。
最も身近な消費財、衣料品・ファッションに関わるアパレル産業は、大量生産・大量消費型ビジネスモデルの拡がりとともに、環境負荷が非常に大きい産業の1つとなりました。例えば、世界全体で毎秒トラック1台分の衣服が埋め立て、または焼却処分され、人間活動で排出されるCO2の10%が衣服生産段階で排出され(←国際航空・海運分野の排出量合計よりも大きい!)、さらに毎年930億m3の水(=500万人分の生活に必要な水の量)を使用し、毎年衣服から出るマイクロ・プラスチック50万㌧が海洋に放出(=500億本分のペットボトルに相当)されているといわれます(※ 1)。
アパレル産業の非倫理的な問題は、地球環境分野だけでなく、2013年バングラデシュで起きたラナ・プラザ崩壊事故(死者1000人以上、縫製工場の安全管理が深刻な問題!)、大手アパレルメーカーの委託生産先の途上国の工場での低賃金・長時間労働、児童労働の問題(フェアトレードの観点からも問題!)など、広く認識されるようになりました。それらサプライチェーン問題に加え、原材料調達から生産・流通、使用、廃棄までの各段階での環境負荷(LCA:ライフサイクルアセスメント)の問題、さらに動物福祉への配慮など、衣料品・ファッションのSDGsに関わる問題が山積しています。
世界的アパレル企業では、諸々のエシカルな問題提起、SDGsへの関心の高まり、さらに2022年3月末EU「持続可能な循環型繊維戦略」(※2)発表により、サステナブルファッションの取組みが加速しています。幅広い世代の低価格衣料品を販売するスウェーデンのH&M(エイチ・アンド・エム)社では、従来からの店頭での古着回収(1袋ごとに500円クーポンと交換)に加え、再生ポリエステル素材の利活用(HPでのリサイクル率の公表)等に取り組み、日本の多国籍アパレル企業、ユニクロも、自社製品の古着回収、補修・リメークサービス、ダウン製品リサイクルを始めています。その他の企業も、マイクロ・プラスチックが出にくい素材の開発、在庫管理のためのDXによる生産の適正化等も拡大しています。
サステナブルファッションのための消費者の取組みの第一歩は、①(買う前に)“本当に必要か”よく考える、②(捨てる前に)ゴミにせず“リユース・リサイクルできないか”考える、等の簡単で身近な行動です。①は、自宅クローゼットの衣料品の十分な把握・管理(“タンスの肥やし”が何枚もあるかも…)、②では、メルカリ・ヤフオクから店頭の古着回収まで、衣服を3R(循環型経済)にのせることが大切。21世紀は地球に負荷をかけない“サステナブルファッション”こそ一番ファッショナブルかもしれません。
注:
1. 消費者庁「サステナブルファッション習慣のすすめ」https://www.ethical.caa.go.jp/sustainable/
2. ジェトロビジネス短信「欧州委、持続可能な繊維戦略を発表」 欧州委、持続可能な繊維戦略を発表、
ファストファッションは時代遅れと批判(EU) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)
3.「サステナブルファッション~具体的な6つの取り組み例」サスティナブルファッションとは?具体的な6つの
取り組み例 | COE LOG (chuden.jp)
大西 慧子(NPO法人消費者ネットジャパン理事)