1. 公開セミナー開催の概要、目的など 2023 年 11 月 30 日(木) サイバーセキュリティ、行政情報システムを⻑年研究されてきた、立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授を講師にお招きし、 ZOOM を活用した公開セミナー「私たちの暮らしとデジタル社会〜 マイナンバー制度について学ぼう!」を、全国から総勢62名の参加者を得て開催した。日本がデジタル社会を実現するための最重要政策の 1 つ、マイナンバー制度について、背景・仕組み、国内外事情、メリット・課題等を学び考えるための正しい基礎知識の習得が開催の目的である。以下に当日のご講演の要旨を報告する。 2. マイナンバー制度設置の背景、同制度の特徴、マイナンバーカードとの違いとは 近年少子高齢化に伴う労働人口の減少に直面する日本では、公務員数の減少、自治体の公共サービスの低下が不可避の状況である。その課題解決には、電子申請等のデジタル技術の導入により窓口業務の負担軽減、業務効率の改善が不可欠だが、その鍵となるのが「マイナンバー(制度)」と「マイナンバーカード」である。一般に混同されやすい「マイナンバー(制度)」と「マイナンバーカード(略称:マイナカード)」であるが、マイナンバーとは「すべての日本居住者(含、外国人)に付番した12桁の単なる個人識別番号」であり、法律で義務化され拒否できない。すなわちマイナンバーは国民IDであり、悉皆性(全国民に漏れなく付番)・不変性(番号変更が困難)・用途制限(税・社会保障・災害給付の3用途に関連法で規制)等の特徴がある。一方、マイナカードは、主にオンライン手続きで本人確認するためのもので、実はマイナンバーに直接関係はなく、身分証はオマケの機能であり、カードを取得するか否かは任意であり、個々人の義務ではない。 3. わが国の国民ID制度の歴史、マイナンバー制度設置がめざすもの わが国の国民ID制度の歴史は1970年代に始まり、2000年台の住基ネット騒動を経て、2015年当時の民主政権下でエストニアとオーストリアの両国モデルを折衷して、日本のマイナンバー制度がスタートした。同制度は、事実上の納税者番号、社会保障番号として実用化、見える化され、民間企業も税務処理等の際に利用している。マイナンバー(制度)の目的は、あくまで公共サービスの事務ミス軽減と効率化である。 1)マイナンバーを利用した事務を明確に限定すること、2) 1)の結果を本人に公開すること、すなわちマイナンバー利用事務において個人情報が適切に扱われ追跡可能であること、以上2点がマイナンバー制度活用にとって必須の要件である。 4. マイナンバーカード利活用によるデジタル社会の未来へ 個人認証(日本在住者である証明)の要であり、物理的カードという強みを持つマイナカードの利用により、私たちは行政サービスの電子申請や業務効率化等の利便性を享受できる。昨今のマイナカードと健康保険証の紐付け作業で発生した同姓同名・表記揺れなど人為的ミス等の諸問題解決を経て、マイナカードの利活用が日本のデジタル社会の未来にとって不可欠である。 (NPO法人消費者ネットジャパン理事 大西慧子) |