NPO法人消費者ネットジャパン(じゃこネット)
  • HOME
  • じゃこネットとは
  • 活動内容
  • BLOG
  • English
  • 会員専用

海洋マイクロプラスチックごみ問題を考える             〜レジ袋の有料化をきっかけに

11/17/2020

 
私たちの日常生活に溢れるプラスチック─軽い・強い・価格も安い、さらに成形しやすく透明、とまさに何拍子も揃った、非常に便利な素材として、製品そのもの以外に、ビニールや発泡スチロール等の包装や梱包・緩衝材等にも幅広く使われている(注;家庭ごみの容積比6割超が容器包装、うち約5割がプラスチックごみ;2018年度)。
 
プラスチックの多くは、ごみとして“使い捨て”され、利用後、きちんと処理されず、環境中に流出してしまうことも多い。手軽に使える分、手軽に捨てられてしまう。環境中に流出したプラスチックごみが、河川を経由して、最終的に行きつく場所が「海」である。
 
海洋中の5ミリ以下の微細なプラスチックごみ(以下、プラごみ)は「マイクロプラスチック」と呼ばれ、すでに世界の海にプラごみは、合計で1億5,000万トン存在するといわれ、さらに少なくとも毎年800万トン(重量ではジャンボジェット機5万機相当!)ずつ、新たに流入しているという。それらは、生態系等や居住環境に及ぼす影響、船舶航行への障害、観光・漁業への影響等が懸念され、その海洋汚染対策が、ここ数年、喫緊の国際的課題として注目されている。
 
ダボス会議で知られる「世界経済フォーラム」発表によれば、現在海へ流入している海洋プラごみは、アジア諸国由来のものが、全体の8割超を占めるとされ、発生国のベスト3は、中国・インドネシア・フィリピン等、日本の近隣のアジア諸国である。

世界のプラスチックの年間生産量は、過去50年で20倍に増大し、今後も、3億1,100万トン(2014年)から2050年には11億2,400万トンと約4倍に増大する見込みで、その時点で“海洋プラごみの量が海にいる魚を上回る”というショッキングな予測が発表されている。これらを受け、世界各国でファストフードやスーパーの樹脂製ストロー、レジ袋の提供禁止等、使い捨てプラスチック対策が急拡大している。
 
日本でも2020年7月から経産省と環境省は、容器包装リサイクル法の省令改正により、原則、すべての小売店でのレジ袋の有料化を義務化する法律が施行された。
 
レジ袋有料化から見える消費者意識、日本のプラごみの現状、削減のために私たちが取り組むべき課題について考察した、「オレンジページくらし予報」という女性誌アンケート調査(※)では、今まで無料だったものが有料になったにもかかわらず、「レジ袋の有料化」に約8割が賛成と回答し、その理由のトップ「プラスチックごみの削減につながる」が約7割に上っている。 (※) https://www.atpress.ne.jp/news/227120 : 調査対象は、国内在住の20歳以上の女性約1.700名。
 
一方で、プラごみ問題の現状への正しい理解はまだまだ進んでいない。例えば、日本が廃棄しているプラごみの量が1人当たり年間32kgで、世界ワースト2位(出所:国連環境計画(UNEP)2018年報告書)であるが、この事実を知っている人は約2割、海洋汚染を引き起こす「マイクロプラスチック」という言葉の意味まで知っている人は約3割と、世界的な問題として注目されているわりに少なく感じられる。一方で、今回の有料化をきっかけに「プラごみ問題への関心が高まった」は9割超と大変高く、問題解決に向けた前向きな姿勢が感じられる。
 
環境に負荷をかけた、持続可能とはいえない経済発展が続く限り、海洋プラスチック問題も、今後さらに拡大するだろう。日本は、1人当たりの容器包装等プラスチック発生量が世界第2位、プラスチック生産国としては世界第3位であることを国民1人1人が自覚し、海洋プラスチックごみ問題への責任ある対策が求められる。

世界的にコロナ禍の収束が見通せない中、レジ袋有料化による削減が始まった一方で、飲食店からのテイクアウトの増加など、プラスチック容器削減が難しい状況が続く。

海洋プラごみ問題に関連したSDGsとしては、14番目の目標「海の豊かさを守ろう」が挙げられるが、2019年6月、大阪市で開催されたG20サミットでも、2050年までに新たな海洋プラスチックごみによる汚染をゼロにする目標を掲げた「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を世界各国の首脳が共有している。行政や企業だけでなく、私たち消費者が三位一体となって知恵を出し合い、今こそ問題の深刻さを意識し、日常生活を見直し、解決に取り組むときではないだろうか。 
(大西慧子、じゃこネット理事)

フランスからの新型コロナウイルス関連情報

9/17/2020

 

フランスの消費者団体の新型コロナウイルス危機への対応〜
消費者向けに発信した最近の情報〜

Fédérale des Consommateurs (略称;UFC-Que Choisir)は、1951年に設立され、会員数約14万人、雑誌購読会員50万人、139の地方組織を持つフランス最大の消費者団体です。UFCは幅広い商品、サービスの詳細な研究や比較テストを行っています。パリの本部では、約140名の従業員が、ウェブや紙媒体での出版、法的問題、ロビー活動等に取組んでいます。
​

今回のブログでは現在の新型コロナウイルスの大流行において、UFC-Que Choisirが行っている消費者向けの情報の概要を紹介します。                            
 
フランスでの新型コロナウイルス感染状況は、2月末には1日当りの新規感染者数が40人程度でしたが、3月30日には7,500人余と急激に増加しました。その後減少し、一時は数百人程度となりましたが、7月初旬から再び増加し、8月23日には新規感染者が約4,900名、累計では感染者 約24万人、死亡者 約3万人となっています。
 
さて、UFC-Que Choisirはこの危機的状況において様々な活動を行っていますが、消費者に必要な情報については、ウェブサイトを中心に多数発信しています。2月に第1報を発信した後、感染者数が急増した3月、4月、5月にはそれぞれ、41件、69件、36件と増加、8月25日までに合計で186件発信されています。

その内容としては、下表に示すように、航空券と旅行のキャンセルへの対応が最も多く、次いでマスク関連、感染予防・自己診断、消毒方法、治療薬…と、新型コロナウイルスの感染に直接関係ある項目が続きました。フランスでは3月17日から5月11日までの8週間、都市封鎖が行われたため、日本国内とは異なる優先順位、異なる対応と思われるものも少なくありません。この中でいくつかの興味深い情報についてその概要をお知らせします。
画像
1 欠航便の払戻しに関する航空会社57社に対する通知            
今回の新型コロナウイルスの大流行での航空便の欠航や旅行のキャンセルは全世界的な問題ですが、フランスではそれが大きな社会問題に発展しています。それに対しUFC-Que Choisirは消費者保護の観点から、以下のように対応しています。
                       
UFC-Que Choisirが航空会社76社の対応を分析した結果、欠航便の航空券代を即座に払い戻したのは21社のみで、他の57社は、バウチャー等を配布し、払戻しを行っていません。欧州規制では「フライトがキャンセルされた場合、航空会社は最初の選択肢として、7日以内に購入価格での航空券の払戻しを提供する必要がある。」と明確に記載しています。さらに欧州委員会は、「航空会社がバウチャーを提供する場合、この提案は、乗客の払戻しを選択する権利に影響を与えることはできない」としています。従って航空会社は消費者にバウチャーの受取りを強制することはできません。
 
UFC-Que Choisirは、払戻しに応じない57社の社名を公表するとともに、乗客が航空会社に、払戻を請求するためのメールのテンプレートを提供しています。
出典:Vols annulés L’UFC-Que Choisir met en demeure 57 compagnies aériennes  4月24日掲載
 
2 自動車/オートバイおよび保険220万ユーロが保険契約者に還元されます!
フランスでは8週間に渡り都市封鎖され、自動車の運転が認められなかったため、交通事故が激減しました。UFC-Que Choisirは、事故激減により自動車保険支払の為の積立金が大幅に積み上がったとして、その分を消費者に還元することを求める活動を行っています。
                       
3月17日に始まった都市封鎖は消費者を経済的に圧迫しています。仕事量が減少した企業の従業員のみならず、多くの自営業者、零細起業家らも含め、収入が減少した上に家賃、ローンの返済、保険などの支払い等の維持費がのし掛かっています。
 
一方で、都市封鎖以降、自動車による人身事故の頻度は91%減少しました。UFC-Que Choisirは、保険金の支払額の減少により140万から230万ユーロが保険会社の積立金に上乗せとなる可能性があると推定しています。この状況を鑑みUFC-Que Choisirは、保険会社の積立金の蓄積分に見合う保険料の削減を求めています。試算では、これを実行すれば220万ユーロの会費が削減され、1台当りでは、車で50ユーロ、オートバイで29ユーロの削減となります。法律では保険契約者は契約期間中のリスクが減少した場合に保険料の額を減らすことができると法律で規定されており、これは完全に正当な要求です。
 
UFC-Que Choisirは保険料を引き下げることにより、自動車保険会社の積立への上乗分を分配することを経済保険大臣に求めます。その間、消費者が保険会社に保険の支払額の低減を要求することができるように標準的なメールのテンプレートを提供します。
出典:Assurances auto/moto et Covid-19 2.2 milliards d’euros à rétrocéder aux assurés ! 20年4月27日掲載
 
3 マスクは新しい社会生活の不可欠な部分                               
フランスでは今まで、日常的にマスクをつける習慣はありませんでしたが、今回の新型コロナウイルスの大流行で、多くの人がマスクをつけるようになりました。このマスクについてUFC-Que Choisirは会員に向けてのアンケート調査を行っています。以下が7,160人の回答の概要です。

1)どのような種類のマスクを使用しますか?
 43%の人が店頭販売のマスクを見つけられませんでしたが、自家製の布製マスクを作った人が53%いました。店舗購入に加え、最寄りの自治体からも布製マスクを提供されたので、4分の3の人が布製マスクを持ち、38%の人は使い捨ての手術用マスクを持っていました。両方を使用している人もいました。ただし、12%の人はマスクを着用していないと回答しました。
2)マスクの着用
フランス人はマスクに慣れていません。今までは、冬のインフルエンザの流行中でも、マスクは推奨も着用もされていませんでした。しかし今では、90%の人が快適でないと感じているにもかかわらず、80%の人が義務化するべきと考えています。
30%の人は「常に着用」し、26%は外出時に「できるだけ頻繁に着用」しますが、23%は「時々着用」し、残りの21%の人は習慣を変えず「着用していません」。平均して週に1時間30分マスクを使用しています。これはおよそ買物に必要な時間に相当します。
3)マスクの適切な使用
マスクの着用が有効かどうかは、マスクのろ過能力に左右されますが、使い方も重要です。大多数の人は、着用前と外した後の手洗が不可欠であることを理解しています。さもなければ手で汚染されてしまいます。マスクの管理については、布製の場合、42%が常に洗濯しています。
 
洗濯はコロナウイルスの不活性化に効果がありますが、効果を確保するためにはお湯、石鹸または洗剤の使用、および機械的な摩擦作用の3つが重要です。ウイルスの不活性化には60℃を保つことが重要ですが、洗濯機を使用する場合、60℃が保たれているかなど分かりませんし、幾つかのマスクだけの為に、洗濯機を回すことも不経済です。

なお、使い捨ての手術用マスクについては、4分の1の人が使用後は直ちに捨てると答えています。
出典:Masques Un incontournable de notre nouvelle vie sociale  2020年5月19日掲載 

4 食品ラベルはもはや信頼できません!
現在の新型コロナウイルスの大流行において、日本でもアレルゲンや消費期限等、消費者の安全に関わる項目を除き、原材料や原産地等、食品表示のルールが緩和されていますが、フランスでも同様の措置が取られています。この動向に対して、UFC-Que Choisirは運用緩和を認めた、競争・消費・不正防止総局(DGCCRF)を批判しています。 
                      
新型コロナウイルスによる危機下において、食品の供給が困難となっているため、食品会社は、ラベルを変更することなく、食品のレシピを変更するかもしれません。これは、競争・消費・不正防止総局(DGCCRF)による例外的な「許容度」によるものです。
 
DGCCRFは、「このような短期間でラベルの変更に対応することは実際に不可能であり、包装材製造業者の活動自体が新型コロナウイルスの危機の影響を受けている」ことを理由に正当化し、この緩和措置は「消費者の安全を危険にさらさない小さな変更」のみに認められるとしました。また、アレルゲンの表示に関して、DGCCRFは、「表示の対象となっているアレルゲンは、ラベルへの記載無しにレシピに加えることはできません。」と説明しています。
 
それでもなお、消費者に対する透明性の問題が残っています。実際、DGCCRFは、「レシピの変更が製品の本質的な品質に大きな影響を与える場合、その情報は、売場においても、Webサイトも、消費者に伝えられなければならない。」としていますが、それらの製品が速やかにWebサイトに掲載されることを保証するだけです。
 
しかしながら、DGCCRFが示す「大きな影響」とは、どういう意味でしょうか?また製造業者は、すべての場合において、自社のWebサイトで新しいレシピの詳細を提供する必要があるのでしょうか?危機が継続する状況下、公式の品質標識表示であるラベル・ルージュ(高品質表示)、AOP(原産地保護呼称)、IGP(地理的保護表示)においても、約50の製品の仕様の暫定的な変更がINAO(国立原産地・品質研究所)によって許可されています。
出典:Produits alimentaires On ne peut plus se fier aux étiquettes !  2020年5月6日掲載

 
感想 航空券の払戻しや自動車保険料金の還元など、新型コロナウイルスの大流行によって、今まで予想もしていなかった問題が発生していることが日本でも報道されていますが、これらの対応にUFC-Que Choisir等、欧米の消費者団体の活動が貢献しています。消費者団体の規模が異なりますが、日本の消費者団体として、私たちが学ぶところが数多くあることを実感しました。(南澤 陽一)

オーストラリア特集〜                                            『チョイス』から安全関連の情報をピックアップ

7/31/2020

 
画像
(Choice)は、1959年に設立したオーストラリアの有力な消費者団体です。1960年から、『チョイス』という雑誌を発行しています。毎回、特定の商品・サービス、医療、健康、個人資産(保険、投資など)などの消費者に関心の高いテーマを取り上げ、商品テスト及びサービス内容を比較し、その結果を消費者に伝えています。また、読者から寄せられる情報の紹介や問い合わせへの回答から、啓発及び消費者政策の紹介・提言まで、非常に幅の広い情報提供を行っています。現在、17万人以上の定期購読者数(紙ベースとオンライン)を誇ることができるというのは、国民からの高い信頼度を得ている証しです。
 
以下、設立当初から、チョイスが重要視してきた「消費者安全」というテーマに絞り、2020年の2月から7月まで発行された『チョイス』の中から情報をピックアップしてみました。ここで、一部を紹介します。
*一部の情報は、会員ログインが必要
 
2020年2月号から〜
 
・製品安全関連法の強化を要請
チョイスは、豪州政府に対して製品安全関連法の強化を要請しています。背景には、家庭内でよく使われる製品による子ども(特に乳幼児)の怪我や死亡の事故、およびリコールされている製品(製品全般)の未回収率の実態があるようです。
 
チョイスによると、保護者にとって、玩具の小さな部品による子どもの誤飲の事故は想定しやすいでしょう。一方、家庭内で使用するごく一般的な商品も、誤飲のリスクがあるにもかかわらず、そのリスクを意識されないため、重症・死亡の事故を起こしています。例えば、ボタン式乾電池はその典型例です。
 
最近、乳幼児のボタン式バッテリーによる誤飲事故への対策として、豪州規格団体(Standards Australia)は、規格策定に着手することを表明しています。しかし、当団体が策定するのは原則的に任意規格となります。そのために、任意規格を採用するかどうかの判断は、各製造者の裁量に任されます。任意規格の義務化は、可能ですが、国や各州政府の権限行使に任されます。
 
チョイスは、さらに、リコールされている製品の未回収率を問題視しています。製品の回収件数は、1998年以降、4倍にも増えているのに、豪州競争消費者委員会(消費者行政の連邦機関=ACCC)の推定では、回収の対象となっている商品の約半分は、まだ回収されていないのが、大きな問題であるとしています。
チョイスは、上記の実態を踏まえ、製品全般の安全を強化するために、豪州法にない一般安全規定(注1)の導入を要請しています。そうすると、事業者が製品を流通させる前に、製品安全を確保することが義務となる、と指摘しています。
 
・海外から購入する製品の安全への注意
チョイスは、海外旅行中に、あるいはオンラインで製品を購入する動機として、低価格であることや、国内製品にはない特徴があることが挙げられます。しかし、中に模倣品や国内外で販売禁止・リコールの対象となっている製品、及びオーストラリアの製品安全基準を満たしていない製品があるから、消費者は慎重に製品を選ぶべき、としています。
・国内外の行政機関及び消費者団体の公開情報に基づき、次の5種類の製品を購入する際、安全性の確認を呼びかけています。
*乳幼児・小児向けの玩具
*乳幼児用製品
*USB充電器、旅行用の海外変換プラグ、モバイルバッテリー
*化粧品
*ダイエット用の医薬品、食品、機械
 
2020年5月号から〜
 
・ボタン式バッテリーの安全〜 続報
チョイスは、3月に豪州競争消費者委員会(ACCC)が安全基準の義務化(mandatory standard)を含む規制方法の検討に着手したことを喜んでいます。チョイスでは、長きにわたる活動で、設計及び製品情報についての安全基準の導入を要請してきました。今後の動向を注視する、とのことです。

・ストローラー トライク(ベビーカー と三輪車を一体となっている)の安全性
チョイスがストローラー トライク(注2)の製品テストを実施し、2/3の製品について、義務づけられているベビーカーの安全基準を満たしていないとの結果が出ました。チョイスは、この情報を規制当局(ACCC)と共有しました。
つづき...(会員ログインが必要)
 
2020年7月号から〜
 
本号は、チョイスの設立60周年を記念し、重要な活動分野となっている製品安全についての特集記事を掲載しています。

・チョイスのこれまでの業績のトップ5を紹介さしています
1) 1974年に制定された、取引慣行法(Trade Practices Act)の設立に貢献したこと(注3)。
2) 2005年に、12種類のベビーベッドの製品テストを実施し、5種類のベビーベッドが強制規格を満たしていないことと、2種類のベビーベッドが辛うじて合格している、とのテストの結果を公表しました。この結果を受けて、政府は2006年に常設専門委員会(Productivity Commission)に製品安全関連法規の見直しを委託し、その結果、2008年に製品安全を強化するための措置を承認しました。
3) 1967年に、チョイスが子供用パジャマの製品テストを実施し、パジャマの引火性の問題を発覚しました。この結果は、情報の開示(低又は高引火性の義務表示)を義務付ける強制規格の策定につながりました。
4) チョイスの調査により、加熱しながら混ぜたりできる多機能を持つ調理機器(当時のThermomix TM31)の部品の不具合により、火傷の事故が多発していることを判明しました(87名中、45名が怪我をし、その中の17名に治療が必要でした)。また、事業者に返金を求めた購入者から、威圧的な対応を受けた情報を収集しました。つづき...(会員ログインが必要)
5) タカタ製造のエアバッグのリコール
チョイスは、2017に自主的にリコールされていた当エアバッグの回収状況を調査し、不十分な点を指摘しました。この調査結果を受けて、連邦政府は史上最大級の強制的リコールを命じました。その後も、チョイスが引き続きリコール状況をフォローしています。2020年3月の時点で、20万個のエアバッグが交換作業を待っており、2020年12月まで、完成する予定となっている、とのことです。
 
チョイスは、今まで、多くの支援をいただきながら、製品安全の強化に貢献してきたが、まだまだやるべきことを指摘しています。例えば、長年チョイスがボタン式バッテリーの危険性を注視しています。2013年以降、子ども2名が死亡事故の他、たくさんの子どもが誤飲により怪我をしています。最近の製品テストでは、17種類の家庭用品中、ボタン式バッテリーがついている10種類の製品について、子どもが簡単に取り出し誤飲する可能性があるから、安全性に欠けていることを公表しています。
つづき...(会員ログインが必要)
 
・子どもと家具の転倒事故について 
オーストラリアでは、毎年、家具やテレビの転倒により、病院で治療を受ける必要のある怪我人は、約2,500人にも上ります。イケア社は、2017年に行った、死亡事故を起こしたタンスをリコールするとともに、消費者向けへの注意喚起の公表活動を行ったため、ある程度、タンスの安全性に関する一般消費者の意識が高まってきています。
 
チョイスは、様々なリスクがあることを知っていても、どの程度の消費者が壁に固定しているのか、を調べるためにアンケートを実施しました。その結果は、テレビや本棚を固定する消費者は、半数以上(テレビは64%、本棚は58%)ですが、チェスト・タンスなどの家庭内家具の固定率が少ないこと(チェストは21%、タンスは18%)でした。固定しない主な理由として挙げられたのは、子どもやペットがいないこと(持ち家の人の55%)、家具や壁への変更が賃貸契約上、認められないこと(借りている人の58%)です。
一方、半数以上の回答者(65%)は、安全で安定している家具のデザインの責任は、生産者側にある、と考えています。チョイスは、製品安全についての一般規定の導入を要請しています。
 
・オンラインマーケット市場と子ども向け中古品の安全について
チョイスによると、2019年に、オーストラリアで販売された約9,500万個の中古品のうち、78%のものがオンラインで販売されました。Facebook Marketplace, Gumtree, eBayのようなオンライン市場は、利用方法が簡単で、無料のプラットフォームを提供していますが、一方、利用者としてリスクがあることを意識する必要があります。通常の小売店販売なら、リコールの対象となっている製品が流通しないように事業者が迅速に対応できるが、個人売り手の場合は、販売しようとしている製品はリコールされていることすら把握していない可能性があります。
 
チョイスの調査では、安全性に欠けている製品は、オンラインマーケット市場において広く販売されていることが判明しました。また、上記の複数のオンライン市場を中心に、リコールの対象となっている子ども用製品を検索し、見つかった製品の名前と問題点を公開しました。
 つづき(会員ログインが必要)
 
*******************************************************
注1  欧州法(一般製品安全指令=GPSD)にあるように、製造者に対して、安全な製品のみを市場に流通させる義務を定めます。
注2  ベビーカー と三輪車が一体となっている乳幼児向け製品です。子どもの成長に合わせて、使い方を変えることができます。日本でもアマゾンなどで販売されています。
注3 消費者保護及び自由・公正な競争のルールを定める初めての包括的な立法です。2010年の豪州競争消費者法の前身となります。


「第2回世界食品日」 バーチャル・イベントで議論

7/1/2020

 
​国連は2018年の国連総会で、毎年6月7日を「世界食品安全の日」とすることを採択しました。昨年の第1回に引き続き、FAOとWHOの共催で、今年も第2回の「世界食品安全の日」にちなむ活動が計画されました。
FAOとWHOは「食品安全はみんなの仕事」のスローガンの下、食品安全の持続的変化のために、農場から食卓まで(farm-to-fork)の連続的な安全を保つための5つの行動指針、①食品の安全を確実に、②安全な農業、③加工と輸送の安全、④安全に食べる、⑤安全のための連携、を提唱しました。
そして「世界食品安全の日」にちなんだ、イベントやレクリエーション、スポーツ活動等を実施し、若い世代を引き込むとともに、メディアを巻き込み「世界食品安全の日」のメッセージの拡散する様、世界各地に呼びかけました。
 しかし今年は残念ながら、世界的な新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)により、大規模なイベントの実施が不可能となりました。そこでFAOとWHOは各地でバーチャル・イベントの開催を呼びかけ、世界各地で種々の活動が行われましたので、その一部を紹介します。
 欧州食品安全局(EFSA)は6月8日、食品安全に関するツイッターQ&Aを開催しました。質問には、EFSAの事務局長ベルンハルド・ウール氏と、コーデックス書記のトム・ハイランド氏がオンラインでライブ回答しました。
 FAO北米支局は6月14日、「新型コロナウイルス時代とそれ以降の食品安全」と題したオンラインセミナー(ウェビナー)を主催しました。食品安全に関する多くの専門家が講演やパネリストとして参加しましたが、その中にはWHO事務局長補の山本尚子氏も含まれています。
 一方アジア太平洋地域では、OIE(国際獣疫事務局)、WFP(国連世界食糧計画)も共催に加わり6月5日、「新たな標準における食品安全」と題したウェビナーを開催しました。アジア太平洋地域の国々からの専門家が、今後数年間で取り組むべき食品安全の優先課題について議論しました。
 一方、消費者団体もこの「世界食品安全の日」にあわせ、多くのツイートなどを寄せています。英国の消費者団体“WHICH?”のスー・デイビス氏は、CIの「世界食品安全の日」の特集への寄稿(注1)として、英国が新型コロナウイルス対策として、国を封鎖した時の食料不足について述べ、特に経済的困難に直面している脆弱な人々にとって、必要な食料を手に入れることができるように、政府と食品セクターのさまざまな部分の間でより効果的な調整を確実にしたい、と述べています。
 
 **感想**
今年の「世界食品安全の日」は、新型コロナウイルスのパンデミックにより、予定していた活動がでなかったことは残念でした。しかし、このパンデミック下、またそれ以降に、食品安全に関して実施すべき課題を、ウェビナーなど新たな手法で議論することが出来、歴史の転換点に立った有意義な活動ができたと思います。(文責:南澤)
 
注:
1. https://www.consumersinternational.org/news-resources/blog/posts/world-food-safety-day-2020-food-trade-and-future-uk-food-policy/
 

CI 速報: コロナ禍と消費者問題〜CIが要請書を公表

6/4/2020

 
画像

新型コロナウィルス(以下、「COVID-19」)の世界的流行(パンデミック)は、消費者視点から様々な問題を引き起こしている。国際的な消費者団体の連盟である Consumers International (CI)は、加盟団体と連携しながら、これら諸問題に取り組むための活動を展開している(注1)。その一環として、CI は2020年4月16日に加盟団体とともに、G20加盟国の政府に対し、消費者の権利・利益を重視したCOVID-19への国際的対策を呼びかける共同声明を発表している(注2)。以下に、その概要を紹介する(注3)。
 まず、前文では、CI 加盟団体のCOVID-19への取組みを通じて、以下の見解を表明している。
  1. COVID-19の危機的な状況の中、公正で透明性の高い、断固とした行動をとることで、緊急時の救命のみならず、持続可能な社会および経済を再構築する際に必要な、リーダーシップと利害関係者間の連携に欠かせない信頼関係が構築できる。
  2. COVID-19パンデミックの国際性は、私たちに今日世界がいかに相互に連関しているかということを認識させている。世界の人々は、消費・生産のグローバル化により、食料、金融、健康、移動を含むあらゆる分野において、多大な影響を受けている。    
  3. 新興市場、及び各国の脆弱な立場にある消費者は、健康や死亡のリスク、及び経済低迷による影響を最も受けやすい。                             
 私たちは、現在の緊急時だけでなく、将来に向けて、あらゆる世代の人々にとって安全で公正、持続可能で強靭な市場を再構築するために、消費者保護が重要であると考える。

 次に、共同声明は、どのような行動が必要かを二段階に分けて提案している。まず、第一段階(現在必要な行動)は、社会・経済の主要なシステムや市場において消費者を保護することである。
 具体的には、1)国連消費者保護ガイドラインに掲げられた、消費者のニーズ(健康、食料と生活必需品、金融、インターネットへのアクセスなど)を保障すること、2) 不公正な市場慣行から、消費者を保護すること(便乗値上げ、過小返金・補償、デマ・悪質商法・詐欺、金融へのアクセス障害や不当な返済からの保護、個人情報の保護)、及び 3)脆弱な低所得層の消費者を保護することを挙げながら、それぞれの詳細な内容を提示している。
 第一段階の行動を実施した上で、市場における消費者の権利の尊重に基づき、持続可能な消費と生産への迅速な移行に投資すべきであるとしている。それを実現するために、7つの課題について提案がされている。それらは、より強力で包括的な消費者保護、最優先課題としての持続可能性、健康の増進、食料供給体制の強化、公正な金融サービスの提供、公正な公共投資、及び公正で安全なネット環境の提供である。
 
 
注:
(1) https://www.consumersinternational.org/what-we-do/covid-19/
(2) https://www.consumersinternational.org/media/346205/covid19-jointstatement.pdf
(3) 全文(原文英文・和文仮訳)は、全国消費者団体連絡会のサイトに掲載されています。 
   http://www.shodanren.gr.jp/database/432.htm

今日は世界消費者権利の日

3/15/2020

 
画像
2020年の「世界消費者権利の日」のテーマは、The Sustainable Consumerとなっています。世界的な危機ともいえる気候変動、生物多様性の損失、食品ロスやプラスチックゴミなどの問題への対策が急務となっている中、CIでは持続可能な消費を取り上げSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能発展目標)の一つである持続可能な消費(*12番の目標)を注目しています。下記のURLで今年のテーマに関する趣旨や活動の概要を確認できます。
https://www.consumersinternational.org/media/319941/campaign-outline-2020-external.pdf

以下に、この資料の概要を紹介します。欧米諸国の平均的消費生活水準で世界の人々が生活するために、3つの地球の資源が必要となります。一方、基本的な生活のニーズが満たされていない極度の貧困(1日に1.90ドル(現在約205円)以下で生活している人の人口は、約10億人に及びます。健全な地球、そして公平な社会を維持しつつ、次世代に渡すために、私たちは商品・サービスの生産と消費の方法を見直すべきです。持続可能な消費の目的は、資源の効率性および公正取引(fair trade)を高めるとともに、貧困を軽減し、誰もが食料、水、エネルギー、医薬品などが利用できる良質な生活を確保することです。
 
CIによると、消費者が「購入」という選択により商品の使用・廃棄方法に影響を与える力だけでなく、事業者に対して生産から廃棄までの過程(生産、包装、流通、廃棄)における商品・サービスの持続性を要求する力を持っています。また、消費者は、商品の使用期間や機能性を高めることを求めることで、個人としての消費者だけでなく、全ての消費者にとって持続可能な商品をより簡単に選択できるための仕組みの構築につながります。持続可能な消費は、通常の選択(easy option)であるべきであって、個人的な消費者の「選択」に左右されるものではありません。そして、生産・流通・小売業者及び政策の関係者は安全で、耐久性のある、資源効率的な製品作りに最大限の努力をした上で、明白な、信頼できる情報提供の確保が消費者の選択に不可欠であることを強調しています。
 
だれもが安全で持続可能な商品およびサービスへのアクセスが可能な世の中の実現は、CIの活動の最終的な目標です。この目標達成に向けて、CIの加盟団体は今年の世界消費者権利の日に向けて、様々な活動をしています。下記のURLで、世界の加盟団体がどのような活動をしているのか確認できるマップおよびリアルタイムで更新されている加盟団体のブログも公開されています。
https://www.consumersinternational.org/what-we-do/world-consumer-rights-day/sustainable-consumer-2020

<<前へ
    画像

    著者

    タン理事長
    じゃこネット理事
    ​じゃこネット会員

    アーカイブ

    11 月 2020
    9 月 2020
    7 月 2020
    6 月 2020
    3 月 2020
    7 月 2019
    5 月 2019
    3 月 2019
    2 月 2019
    11 月 2018
    6 月 2018
    5 月 2018
    3 月 2018

    カテゴリ

    すべて
    MT理事長ブログ

© All Rights Reserved, Japan Consumer Network